ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「TEXAS」@パルコ劇場(4/7夜)

 2001年に初演された長塚圭史作「TEXAS」を、河原雅彦演出でプロデュース公演、という舞台を観てきましたよ。星野源ちゃん主演というのも見どころですが、個人的にはやはり、阿佐スパ時代の長塚作品を観たい! やっぱり観たい!!というところで。河原さん演出作品はえーと、思い出せるのはゾンビミュージカルくらいしか観ていないような気がするのですが、ゾンビミュージカルも面白かったし何よりやっぱり「前の阿佐スパ」が久々に観たくって…。
 2時間ちょっとを1幕で一気に駆け抜けましたが、うん! いやぁ、大満足! これが、こういうのが観たかったんだ…!! カテコで顔がにんまりしてしまう感覚、久しぶりです(笑)。あの、じんわり…とか、涙堪えて…とか、苦く唇噛み締め…とかが最近多かった気がするので、こういう、うわぁ…(ニヤニヤ)、みたいなの久々で気持ち良かった〜。話としてはそりゃあ「前の」長塚さんなので、相当…タイヘンなことに…は、もちろんなりますが、それでも暴力的なまでの疾走感と、笑えない状況を笑い飛ばすエネルギーは、アドレナリンの分泌促進にはキキまくります。え…うわぁ…なドン引き暗転から次の瞬間爆笑みたいな緩急に、ぶん回されながら乗っかっていくドライブ感はまさにジェットコースター。いやロデオか。首ががっくんがっくんする感じか(笑)。その感覚こそを愉しむ為のものなので、そこは存分に堪能させて頂きました。ああ、やっぱり好きだわこの頃の長塚作品。
 東京からものすごい田舎にある実家に彼女連れで帰ってきたマサル、久しぶりの実家で彼を迎えたのは見覚えのない顔をした姉に幼馴染たち。どうやらマサルが離れていた間に、村では整形が流行っていたようで…というミステリアスな幕開けから、様変わりした村のシステム(?)が明らかになる前半、この辺りでちょーっと、あれれダルい…?と思い始めた矢先に、一気呵成の勢いで急展開し始めてからは後はもう、一気に駆け抜けます。話の内容云々じゃなくてこの駆け抜けっぷりがヤバいんだすごく気持ちいいんだ! 話の内容は気持ちよくないけど!(笑)*1
 キャストはみんな安定感抜群で、源ちゃんはもちろん木南晴夏ちゃんもかわゆいし伊達さんも転球さんもぴたりとハマる気持ちよさだし野波さんも今まで観たお芝居の中で一番好きだったし、岡田くんは相変わらず怖カワだし高橋さんは何かもう色んな意味で持ってくし、吉本菜穂子さんすんっごいし、うん。すんっごいわ。湯浅さんを観ながら、この胡散臭い感じのイケメンさんは誰なのかしらと思っていたらマリアさ…いや何でもないです!! 違います!!! 唯一、出てくると「ん…?」となってしまったのは河原さんでした(笑)。何か…合わなかった、としか(笑)。
 しかしこの作品、演者それぞれが見事だったからという大前提の上に敢えて云うけど、やっぱり脚本が! 脚本がすげぇのよ話が!! やっぱりそこなのよ!! だから、○○さんが凄くって〜とかじゃなくて、ホンが凄かったのです。ああもう長塚さんまじ天才。そして長塚演出の2001年と、河原演出の今回が、どのくらいどの辺がどんな風に違ってて、演出が変わることによってあの脚本がどんな風に印象変わるのか、がとても気になりました。前の観てみたかったなー。あの辺とかあの辺とか、長塚演出だとどうなってたのかしら…ていうか、あんまり「長塚作品だけど長塚演出じゃないと雰囲気変わるね〜!」という印象もあまり受けなかったというか…ただただぶん回されるがままだったというか(笑)。比べて観たら全然違ったりするんでしょうか、比べてみたいなぁ。
 怒涛のジェットコースター展開からどうにもならないラスト、そこに差し込む一筋の救いの光、からもう一段突き落とされる終幕。この流れのゾクゾク感、本当にたまりません。もう一回観たいわ…吉本さんのアコーディオンかっこよかったわ…。WOWOWかBSで放送してくれないかなー、カメラ入ったのかなー。
 冒頭のタイトル出しシーンの唐突な華やかさも面白かったです。TEXASの電飾が若干ぺにょぺにょしてたのも(笑)。そして、タイトルのテキサス、テキサスか…どうしてテキサスなのかなー。テキサスっぽいといえば云えなくもないような、関係ないような(笑)。村のみんなはどうなるんだろうなぁ…。マサル東京に戻っても…どうなるんだろうなぁ…そして天丼味のアレは…どうなるんだろうな…。お姉さんと沼田のシーンが美しかったです。
 で、計らずとも一週間おきに、現在の長塚圭史作品(「ガラスの動物園」)と、過去の長塚圭史作品を観るという機会に恵まれるということになりましたが。「ガラスの動物園」は演出のみ、「TEXAS」は脚本のみ、と若干関わり方は違うけれど、でも長塚さん新旧を間を置かずに観ることができて、それもまた面白かったです。今の長塚さんの、硬質で繊細で観念的な作風と、以前の暴力的でエネルギッシュで破滅的な作品たち、どっちもすごく好きなのでどっちがいいとかは云えませんが、アレらを経たうえで構築される今のアレ、というのを続けて観ると、一層興味深く思えてくる。ああいうものを生み出していたひとが、真逆のような今にたどりつく変遷というか、来歴というか経路というか、面白いなぁ。でも、根底に流れる一筋の温かみ、みたいなのは変わっていないとも思うのです。どこかね、暴力的だったり突き放していたり冷淡だったりしながら、どっかに人間的な温かみが残ってる、のが感じられる。そこも好きな部分です、長塚作品。

*1:でもそこが好きなんだよ