ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「おもいのまま」@あうるすぽっと(7/8夜)

 ちょっと時間が経ってしまいましたが、金曜日の夜に観てきました。あうるすぽっと、客席に座ったのは初めてかな(笑)。ステージ上に座ったことはありますが*1
omoinomama.info
 なるべく観ようと決めている演出家のうちのひとり、飴屋法水さん演出なのでチケット取ったけど、キャストもすごく豪華で、石田えり佐野史郎音尾琢真山中崇という少数精鋭の、とても贅沢な劇場空間でした。飴屋演出の作品は、ストーリーがちゃんと(?)あって、舞台上で役者が芝居をして、ていう所謂「お芝居」な作品と、もっとインスタレーションに近い感覚の作品と、けっこう振り幅が大きいのですが、今回のは前者でした。佐野さん石田さんだもんねぇそりゃそうですよねぇ。
 裕福な家庭で静かに暮らす夫婦の元に、ある夜突然、ジャーナリストを名乗る二人連れの男が訪れ、取材をしたいと申し入れる。戸惑いながらもドアを開けると、二人は強引に部屋へ上がり込み、夫婦への「取材」を開始する。どんどん暴力的にエスカレートしていく「取材」、暴かれる悲劇、ぶちまけられる互いの秘密、そして訪れる最悪の結末…と、1幕はガチンコサイコサスペンススリラーです。怖いです。どうなっちゃうのこれ…と、夫婦の助かる道や可能性をぐるぐる考えながら観ているけど、全然そうならない(笑)。そしてどうにもならないというか最悪な状況のままに1幕が終わる、という…。休憩の間、え、2幕どうなるんだこれ??と疑問符たくさん飛ばしながら軽食をもぐもぐして、席に戻ると、1幕最後の惨劇は嘘のように、舞台上は1幕冒頭と同じ状態に片付いていて、そして始まる2幕は、しばらく「え? ええ??」と戸惑うものでした(笑)。え、どういうこと?が、だんだん、ああ、そういうことか…!となっていき、今度は何というか、いちいち「よしっ!」とこぶしをギュッと握りたくなるような(笑)。1幕をA面、2幕をB面*2とでも呼びたくなる構成だったのでした…すっごい、面白かった。気持ち良かった。あ、もしくは、ネジの時にずーっと、「ユキちゃん今日もダメだったね…」と肩を落とした、アレを取り返すような感じ(笑)。めちゃくちゃエンタテインメントな芝居だった!
 ある状況に対し、Aという選択をした場合と、Bという選択をした場合、結果が180度変わってくる、そういうことを具体的に示してくれた舞台でした。だから、逃げないできちんと見て、きちんと考えて、きちんと判断して選択して、そうしないと、何度でも同じことの繰り返しになるよ、という強烈なメッセージも。それって個人の単位でもすっごく突き刺さるメッセージだけど、同時に、現在の日本の状況にも当てはまることに思えてしまった。隠しておきたい秘密を晒すのは辛いこと、でもそこを出し切ってしまわないと、その上に信頼は築けない。人も企業も国家も同じこと。でないと同じことが何度でも繰り返される。国の選択、企業の選択、個人の選択、どれも、目の前の辛い状況から目を逸らし、選び方を間違えると、取り返しのつかない方向へ転がって行ってしまう。間違いに気付かない限り、何度でも繰り返す。ちゃんと見てちゃんと選べば、何度繰り返しても最悪の事態には至らない…。なんてことを思ってしまうのは、先日の高円寺のデモで飴屋さんのお姿をお見かけしたからかしら(笑)。うん、わたしにはそう聞こえました。
 終わり方がまた、いーい感じにスッキリせず(笑)、でもスッキリはしないんだけど後味は悪くなくて、むしろ爽快で、好きな終わり方でした。ほんと、面白かった〜! NHK辺りで放送しないかなぁ、絶対面白いから観た方がいいとオススメしたい人がたくさんいるのに(笑)。
 心残りなのは、冒頭のナレーションで記者ふたりの声が流れるんだけど、何て云ってたかあんまり覚えてなくて…2幕まで観終わってから、改めて聞いたら絶対、ああ!てなりそうな雰囲気なんだけど…何て云ってたのかなぁ。あと最後のピンポンは誰だったのかなー。ピンポンがまた、ふたりだったりして、なんてのもわたしはアリでいいです(笑)。抜けだせない悪夢っぽくて。

*1:飴屋法水「4.48サイコシス」時、客席がステージ上に作ってあった

*2:シングルレコード的な…