ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「タンゴ」乳母車5押し目(11/12追記)

 マチネでWOWOWカメラが入ってると速報を頂きましたが、ソワレで実際に確認してきました。左右に2台ずつ、センター後方に3台並んで、計7台ありました。何になるのかなー、楽しみだなー!


 本日は唯一取ってみた特設S席でした。上手側センター寄りの2列目、張り出した舞台の上手側角のちょい内側、という絶好の…アラ押し倒しポジション(笑)。堪能させて頂きました☆ 2幕はもう、花嫁さんガン見かぶりつき席で…かああんんわいかったーーー!! 下唇の真ん中に置いたグロスが上唇に少しだけ移っているその赤みまで見てきました…すいませんキモくて…だって可愛いんだもの…。
 思いがけなく演出…というか、何というか、が大幅に変わっていて、びっくりもしました。会話のテンポや緩急、位置なんかは、これは毎回変わっていくのがわかっていましたが*1、そう来るか、そのパターンもありなのか、と…ますます今後どうなっていくのかが楽しみでなりません! あ、収録あったから…とか? どうかな?
 マチネ組から、アルトゥルの前髪が短くなってスッキリしている、という報告もあって、えっあの垂れ掛かる前髪が美しかったのに…と少し残念に思ったのですが、実際見てみると、前髪を切ったというよりは、分け目の根元から軽く立ち上げてセットしたように見えました。立ち上げた分、垂れ掛かる長さがなくなって短く見えたんじゃないかな。額の生え際が全てあらわになっていて、立ち上げた前髪を右側へ流す感じ。あ、もみあげが斜めに、直線的に、すんごいシャープに整ってたけど、初日からあんな直線だったっけ(笑)。定規で引いたようなもみあげラインと、相変わらず完璧にスッキリと整えられた襟足が、清楚に美しかったです。初日から6日目だけど、6日であんなに綺麗なままなもんですかね? ちょくちょく整えるのかしら。だったらやっぱり前髪も切ってるのかなー。
 とりあえず大幅変更点だけ畳んで置いておきます。その他メモは後日追加します。
 
 
 
 一番びっくりしたのは、長塚さんの板上滞在時間が極端に減ったこと! 冒頭の、客席通路から現れるのも、初日から日曜までの4公演は全て、上手側の通路だったけど、今回は下手側の通路を降りてきました。エーデックの前に音高く投げ置いていた解剖学の教科書も手渡してたし、あんまり…主張しない印象に変わっていました。あ、最初のサンルームみたいな窓枠的なものを上げる合図はバンバンバン!と叩いてましたが。長塚さんがアルトゥルに力一杯投げつけていたドレスや乗馬ズボンも、スタッフさんが上手の穴や下手袖から舞台上にほいっと投げていた*2し、場面転換時に話しかけるのも薔薇の受け渡しもなし、冒頭の布を回収するのも舞台上に上がらず舞台の下で穴に片付けていたし、アルトゥルとアラのシーンでも棺桶台の上に座ったりもなく、全く影を潜めていらっしゃいましたよ…。2幕でも、セットの後ろに佇んでいる姿が常に見えていたのに、それもなし。ラストのガラスの時だけ出てきた感じ。どうしたんだろーう! 個人的には、あの、いても見えない存在が、アルトゥルのドッペルゲンガー的なものにも見えて、見えない何かに焚き付けられている感がしてすごく好きだったんだけど…今後どうなるのかしら!
 大きなセリフぶっ飛ばしとかはなく、「名ばかり亭主、なまくらイワシ!」も3回とも噛まずに云えたし*3、あ、実験演劇のストーミルが、アダムのりんごを探しきれなくて赤い薔薇で代用していました。ぱんつは紫でした。アルトゥルは、弁舌の緩急がこれまで以上に自由自在で、オモシロな部分はよりオーバーアクションに、声色もどんどん変えて、時には朗々と時には囁くように云ってみたり、さらにそこに雄弁な手振りが加わって、アラを云いくるめようとするシーンなんて思わず、アラより先に説得されそうな気になったり(笑)。転落っぷりも容赦なく、誰も彼を止められないのは仕方ない、ああする他ない、とラストまで納得できる疾走激走でした。あとは、えーとえーと、あ、ラスト、ついにカテコどころか拍手さえなく終わった! 個人的にはあの、放り出される感じが心地よいので、なくても別にいいです拍手。
 こまごまは明日以降に! 今回はアラに大注目だったので、アラの心の動きがだいぶ見てとれました。やっとか!!
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 追記しようと思ってたのに間に合わなかった…。ひとまず、残しておきたいことだけ追記しておきます。
 ええと、とってもアラ席だったので、もう思う存分アラばっか観ていたわけですが*4、前回観劇時よりも、アラの心の動きというか、何を思ってその言葉を発しているのかが、わかりやすくなったように思いました。もしかしたら、日曜まではわたしがアルトゥルばっか見ちゃった所為なのかもしれないんだけど、でもアラのセリフのトーンとか、感情表現が変わっていたのは確か。その変化で、あれ?って気がついて、そしたら、ああそうだったのか!とすんなり入ってきた感じ。わたしが鈍いのが一番の理由なんだとは思いますけどね! セリフの量が膨大だーっていうのに押され気味で、言葉それぞれの意味の取りこぼしが多いのです…頭のキャパがちょっぴりなもんで…。
 初回から日曜マチネにかけて、ずっと観てたのに、死んでいくアルトゥルが愛してるとアラに告げるのにアラが「それが欲しかった」と答えるのが、唐突というか、え、あ、そうだったんだ?という感じがしてしまって。アルトゥル→アラはバレバレだったけど、アラ→アルトゥルは…そこまでじゃないんじゃないかとか、アラはそんなに真剣には思ってなかった、からかうと面白いカタブツ従兄くらいにしか思ってなかったんじゃないか、なんて思えてしまっていたのです。結婚式の当日に不機嫌なのも、あんまりしたくない方向で不機嫌なのかとか。…わたしが乙女心に鈍感なのが一番問題な気が、今打ってて非常にしてきましたが。オッサンレベルだからな…。まぁいいや。
 で、それが、今回アラを細かくつぶさにじったりガン見していたところ、すっごく印象が変わったというか、芝居自体の動きとか表情とか云いまわしとかが変わっていたからなんだけど、ほんとひっくり返されて、うわー!って。なったのです。アルトゥルがアラを説得するシーンの最後に、アルトゥルが「これで全部だ」みたいなことを云うと、アラが「これ以上何も云うことはないの?」って訊いて、アルトゥルが「ああ、洗いざらい全部ぶちまけたからね!」って答えるところ*5、アルトゥルのその返答を聞いたアラの「そう…」って表情が、曇るんです。日曜までは、納得いかない感じだったのに、今回何だかしょんぼりしてて! で、内輪の話があるから向こうで待っててとアルトゥルに追い出されて、「ここにいちゃいけない?」って聞くセリフも、日曜までははしゃいだ感じに、好奇心とかで云ってみた感じだったのに、今回寂しそうに、悲しそうに云ってて…うわぁ! アラ!!って(笑)。そして部屋を出るアラを、アルトゥルが呼びとめて、アラが部屋に戻ってくるんだけど、この戻ってくるアラが、いつも小走りにちょっと嬉しそうに戻ってくるのが何でかなぁと、アルトゥルに呼ばれたのが単純に嬉しかったのかなーとか思っていたんですが、今回やっと、やっっっっっと、わかったの…! アラが呼びとめられて、嬉しそうに駆け戻るのは、アルトゥルの「これ以上云うこと」を期待してたんだね…。結婚しろとは云いっぱなしだったけど、アルトゥルまだ「好き」って云ってないもんね。それには気づいてたけど、アラがその一言をこんなにも待ってた、っていうのが伝わってきたのが、今回初めてで…アラのいじらしさに涙出そうになったよ…。云ってくれない一言のあてつけに、秘密を持つ。自分のことを好いてくれない*6相手と、形式の為に結婚してあげるんだから、そのくらいの秘密を持ったっていいじゃない、そんな強がりみたいな、意地っ張りみたいな、でも本当はすごく悲しいのが…透けて見えて。ほんっと、今回ほど、ほんの一言、好きだから結婚して、自分だけのものになって、ってアルトゥルが云わないのがもどかしかったタンゴはなかった(笑)。
 結婚式の前にエレオノーラに、お母様は幸せ?って聞くのも、愛してくれない相手と原則の為だけに結婚する不安に駆られているからなのがよっくわかって…ストーミルを愛してると云いながらエーデックとも通じているエレオノーラに、自分の未来を重ねざるを得ないんだろうな。
 権力だの何だのとガラスの玉座に鎮座するアルトゥルのそばに、よっこらしょ、とよじ登って行って、もういいでしょ、式に行くわよ、と場違いなほどに現実的なことを云うアラが、女って強い生き物だわ、とまじまじと思い知らされる気分です。理念とか理屈とか、男たちが現実離れした机上の空論を戦わせている間に、女は子供を産んで生きていかなくちゃいけない。そういうのがね、生命力レベルで感じられました(笑)。しかも、よっこらしょと登っていった玉座の上で、何気なくぽろっとこぼした一言がアルトゥルを地面に這いつくばらせるのね! まったくもって、あの時アラを呼び止めたアルトゥルが、一言好きなんだと云ってさえいれば…どうなっていただろう(笑)。身から出たサビさ!って1幕でアルトゥル云ってたけど、うん、君もだよね(笑)。
 君もだよね、といえば、権力!とぶち立てて玉座に上り詰めたアルトゥルが、「死はお前らの中にある、籠の中の鶯のように」「俺はそれを解き放つことができる、俺の胸三寸で!」とかって云ってるけど、アルトゥルは自分の中にも鶯がいたのをうっかり忘れてたんだねぇ。自分が超越した存在だと信じたいあまり、死の平等性には自分も含まれているってことまで忘れちゃったのね。エーデックがその矛盾点に気付けたのは、彼がアルトゥルと周囲の議論や論理の輪から完全に外れていたから、なんだろうな。
 思わぬ形で、真っ先に解き放たれたアルトゥルの鶯。エウゲーニュシュに「お前さんの身体ももう、用無しだよ」と云われて、静かに立ち上がり消えていくアルトゥル(あれは魂のようなものだと思うのね。アルトゥルの遺体は彼が立ち去ってからもまだ、あそこにあり続けてるよね、芝居的には)(叔父さんは彼が立ち去ってもその場を見つめ続けているし)が、解き放たれた鶯のよう…とは云いませんが(笑)、自分の観念にがんじがらめになっていた彼に与えられた、ある種の解放ではあるとも思えるのです。最悪の形ではあるけれど。粉々に砕け散るガラスはアルトゥルそのものであると同時に、アルトゥルが作り上げた世界であり、また、アルトゥルを閉じ込めていたガラスの檻*7でもあったのではないか、なんて思っているうちにそれを踏みにじる自由と頽廃のタンゴ。素晴らしい。後味の悪さまで完璧なのです。

*1:だからこそ生まれる緊張感も醍醐味のひとつ!

*2:アルトゥルに投げつけなかった

*3:なばかり、をめっちゃはっきりきっぱり云ってて笑った…聞きやすかった…

*4:むしろアルトゥルより見ちゃったかもしれない

*5:セリフは毎度のことながら「的な」です

*6:とアラは思っちゃったよね

*7:=1幕冒頭で客席との間にあった硝子の壁?