ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「タンゴ」初日

 初日の幕が無事、降りました。凄かった、圧巻だった! とりあえず、セリフの量はそりゃ半端なかったですよ…あまりの膨大なセリフ量に、言葉が形骸化して音としてしか意味を為さなくなっていくような。もしくは日本語のゲシュタルト崩壊。でもそれでいい、そういう作品で、そういうセリフなんじゃないかしらと、初回の印象では受け取りました。きちんと意味を汲み取っていけば、また違うものが見えてくるのかも知れないけど! とりあえず初回でそれは無理だった(笑)。
 ストーリーというか展開は、すっごくスリリングでした。どっちに転がっていくのか、どこに落ちるのか、予想がつかないというか先が見えないというか。しかもすんごい疾走感で! 目隠しの全速力な勢いが凄かったです…しかもその勢いが弱まることなく3時間…止まる時は終わる時、みたいな…マグロか(笑)。
 セットとか衣装髪型とか演出とか、は、後程追記しますが、個人的には諸々、超!好みです。はぁ…面白かった…!
 あ、席がサイドの、いわゆるB付き席だったんですが、これが意外に視界良好で、ストレスなく観られました! 何か…カメレオンチケットに文句ばっか云って申し訳ない…素敵なお席でしたよ…。

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 追記しますがセット・演出などに言及するので、ネタバレ回避の方はお気をつけ下さいませ。
 あ、カテコが今回ありませんでした。うん、なくていいと思う。ああいう放り出される観後感も好きです。空虚な舞台だけ残るっていうの…イイよね…。
 
 
 ステージの形状は大きく手前に、正方形に近い形で張り出していて、それを三方向から囲む形で特設S席が3列ずつ配置されていました。舞台上に客席はなく、「血の婚礼」のグローブ座に近い感じかな。「桜姫」みたいに客席込みで可動しちゃうのかとか思っていましたが、そういうこともなく。ステージの奥行きがすごーくあるので、多重構造というか、奥までのセットの重なり具合とか、セットの向こう側まで使った演出とかが面白く、かつとっても長塚さんっぽいなぁと思いました。ついでに個人的に、長塚舞台でよく見る奥行きの演出がすごく好きなので、今回のセットも大変ツボでした(笑)。趣味の話ですが。
 アルトゥルな未來さんは、襟足をすっきりと刈り上げ、耳も出て、トップのボリュームは残して細かいウェイブをかけ*1、顔にそれが垂れかかると繊細な陰影をもたらす…大変、美しいアルトゥルでございました…また襟足というかうなじが綺麗なんだ…。衣装は1幕が舞台写真にあったチャコールグレイ?のだぼっとしたニットに黒いパンツをブーツイン、2幕は婚礼の場なので黒3ピーススーツに白っぽい艶のあるネクタイの正装姿、そのジャケットなし姿も観られるという大変わたくしに優しい衣装でございました…1幕のブーツが可愛いんだ! また未來さんの足の長さ*2が際立つ…長かった、つま先ほんっと長かった(笑)。かっこよかったです! エーデックの橋本さとしさんも2幕の給仕姿が素敵だった…って、ええベスト効果だと思います…。アラ役の奥村佳恵さんの綺麗なことといったら! そこそこの近さの席だったのに、むしろオペラはアラを追っていましたよ…だって可愛いんだもの…正面も横顔もほんっと美しいの。おでこがたまらなく可愛いの、しかも髪がさらっさらのトュヤットュヤなの…! 声も可愛らしくて小悪魔的ですんごく可憐だった! 2幕のドレス姿とか、全く眼福でしたごちそうさまでした。デザインも超好みだったし(笑)。エレオノーラな秋山さんの衣装もかっこよかったなー、正装の方がアンティークで好みでした。スカートのタックがバッスルっぽくて、小さい帽子も素敵だったなぁ。
 ええと、セットは不思議な感じで…基本、すべてスケルトンでした。部屋の壁もアクリル板で透明、テーブルや椅子もクリア素材で出来ていて面白かった。透明のアクリル板の壁に、白い線画で向こうの部屋の家具とか、壁に飾られた鏡とか、あと別の部屋に入るドアとかが描かれてた。で、家族が無秩序状態の混乱時は、壁の向こうに布が下げられていて*3、アルトゥルが革命を起こして「秩序」をもたらすとその布がなくなって全てがクリアーに透明になる、みたいな。照明も、無秩序状態時はいくつもぶらさがった電球みたいな照明が、部屋の真ん中で絡まりあってブドウの房みたいになっていたのが、アルトゥルの革命後は一列に等間隔に並んでぶら下がっていたり。その辺も面白かったです。
 あと、演出というか…長塚さんご本人が、黒子的な感じに、舞台上や袖や通路に出没して、その都度小道具やセットを置いたりどかしたり、動かしたり出現させたり、するのです。黒子より存在感ありまくりだったけど(笑)。もちろん、演者たちは長塚さんと絡むことはないというか、見えないものとして進むんだけど*4、でもただの小道具出没係…ではないような、もっとこう、全体を支配する何かの象徴みたいな、大きな、舞台全体を覆う存在のようにも思えてくる、不思議な演出でした。最初びっくりしたけど(笑)。
 舞台の奥側に張り巡らされた白い布が、ラストのどんでん返し展開(?)とシンクロしてばん、と落ちるのは、あれは落ちるだろうな…と思って観ていたので(笑)、落ちてよかったです。うん、ありゃー落とすよね(笑)。アクリル壁で小さく凹型に区切られたセットが、ゆっくりと漂うように移動するさまが、浮遊感があって、地に足着いていない感とも取れて、面白かったです。あと棺おけ台?+燭台は正直とっても好みでした(笑)。わたしもあそこにねたい。
 …何だか全く的を射ないメモですが、眠さも限界なのでこの辺にしておきます…とにかく膨大な台詞量をよくまぁあそこまで、本人は空虚とか詭弁とか欠片も思ってない、確固たる信念のもとに論理的に語っているのに回りからするとまったく意味を為さない言葉の羅列に聞こえるという、面倒くさい状況を、きっちりと云い切ったなぁ! 渋谷というロケーションも手伝って、オノッチの長台詞をノスタルジックに思い出しては「…進歩!」とか云ってしまう帰り道でした。ああ、愛しい愚かなアルトゥル! かわいそうな子! おつかれさまとしか云いようがない!

*1:Bunkamuraサイトの舞台写真とはまた違った雰囲気です

*2:レッグじゃなくてフットの

*3:布にも家具とかドアが薄く描かれてたような

*4:友達がどっかで長塚さんとアルトゥルが喋ってるように見えたとは云ってたけど。わたしはわからなかったです