ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎 箱宇宙を讃えて」@川村記念美術館

 昨日、天気が良かったので*1、一念発起で行って来ました千葉県佐倉市! 初めて行った! 海近いかなーなんてきょろきょろしてたけど、考えてみたら海近いのは千倉だった(笑)。
 いつからだろう、中学生か高校生くらいから、ジョゼフ・コーネルの箱作品に妙に心トキメきまして。もともと箱好きで瓶好きで、お菓子の空き箱もジャムの空き瓶も捨てられない性質に加え、窓とか扉とか、額縁とか劇場の緞帳とか、「その向こうに何かある」気配のするもの、が好きで。異世界へ繋がるモノを閉じ込めて保有する、という観点(?)から、コーネルの箱たちはそりゃあもうドンピシャであります。好きに決まってる! プラスしてモチーフが鳥に天体に貝殻に卵に虫にガラスに砂…うわぁもう全部好きです。全力で好きです。
 全力で好きなので、多少遠くても初めての場所でも行ってしまいます。川村記念美術館は、コーネルの箱作品を7つ、平面作品*2を9つも所蔵している、おそらく日本一コーネル作品の充実している美術館だと思います*3。DIC株式会社が設立した美術館だそうで…大日本インキ金持ちだなぁ、という大変俗な感想が最初に出てきてしまいますが(笑)。いやピカソもモネもレンブラントも、ピサロマティスシャガールマグリットもありましたよすげー。しかもコーネルの箱が7つ! 何それいっこくれ!!*4美術館は同社研究所の広大な敷地内にあり、JR/京急佐倉駅から無料送迎バスが出ています。敷地がまたそりゃもう広大で…自然散策ができるお庭が併設というか、お庭の片隅に美術館があるというか。ほんっと天気が良くて大変宜しかったです。
http://kawamura-museum.dic.co.jp/index.html


 美術館のチケットを買って敷地内へ入りますが、美術館のチケットを買わなくてもお庭へは全然自由に入れます。シートとお弁当持参のご家族連れがたくさん来ていました、いいなぁ! ピクニック日和だもんなぁ! でもわたしは美術館。お庭は後ほど散策します。美術館の入り口付近にはいきなりコレモンのオブジェがお出迎えして下さいました。


 これ巨大なんですよ! 目に鮮やかな新緑と青空、の下に鋼鉄のオブジェ…かっこよ過ぎる! ちょっと、ジブリ美術館のロボット兵を思い出しました(笑)。フランク・ステラ「リュネヴィル」という作品だそうです。たまらないわこの鉄塊…。
 美術館の建物も、緑に映える素敵な建築で、入る前からうっとりできます。

 常設展示のチケットと共通なので、中に入ればコーネル展も常設展示のピカソシャガールも、全部見られます。がやっぱりメインはこれ!

 川村記念美術館所蔵のコーネル作品16点に、高橋睦郎が一篇ずつ詩を書き下ろしたコラボレーション展です。
http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html#ecatalog

 すっ…………ばらしかった!!!! エントランスから、白壁に散らばる星と滲んで不ぞろいなタイポが美しい「JOSEPH CORNELL X MUTUO TAKAHASHI」の文字、近くに寄ってみたら一文字ずつ、黒い紙を切り抜いて作ってあった…エントランスだけでもふわっふわしてしまう。次の間に入ると、白一面の壁から天井にやはり無数の星、その中にコーネルの略歴と、高橋さんの長編詩が壁に描かれておりました。詩…泣けてきてしまった…何だろう、好きすぎて、愛おしくて。コーネルの箱は大好きだったけど、コーネルさん自身については前知識皆無だったので、どうして彼が箱たち・コラージュ作品を作るようになったのか、とか、背景とか、初めて知りました。知って余計に好きになった。
 純白の控えの間を過ぎると、いよいよ展示です。これが! また!! もう展示室ごとほしい! っていうかここにしばらく住みたい!!という…何なのあの空間…ぎゃーん。好きすぎるー。
 中は一転して黒一色、の壁に白い星が散らばっています。1作品ごとに、壁の凹凸とアクリル板(にも星が散ってる)で仕切られていて、ひとつひとつがそれこそ箱のよう。その箱にはまり込んで、顔突っ込んで、覗き込む先に、コーネルさんの箱、傍らには高橋さんのテクスト。しん…と静まり返った*5暗闇には、ループするオルゴールの音が微かにキロンと鳴っていて、小さな灯りにそっと照らし出された箱たちの中から響いてくるようで。閉じ込められた小さな世界が、暗闇にまぎれてじわじわ染み出して、部屋全体が箱の中に内包されている、そんな気分に浸ってしまうほどでした…朔太郎の蛸的な(笑)。とにかく展示全体が非常に美しかったです…。常設展示の時はきっと、白い壁を背に明るい中に置かれているんだろうけど、それはそれですごく、無駄な感傷やイメージを廃して美しいと思うけど、こんな風に見る側*6の欲するものとドンピシャな方向性でイマジネーションを膨らませてくれる展示方法は、ただ作品に会いに来た、というのより、一段得した気分になれます。イメージが自分の方向性と違っていると、それはちょっと微妙になってしまうんだけど…今回のはもう! これ以上ない!! 素敵だった!!
 図版ではずっと眺めてきたけれど、生で実物を見るのは初めての箱作品でしたが、想像以上に…大きい、ような、そうでもないような…(笑)。図版で見るよりも生々しいというか、何だろう、潜めた息遣いとか、湿度とか、そういう隠微なものたちが感じられそうな、それでいて不快では決してない…箱ひとつひとつが体温を持って呼吸していそうな感じ。彫刻とか絵画には感じたことがない印象を受けました。何でかな、コラージュという手法の所為、かな。芸術家の手で直接、ゼロから生み出されたものより、ある意思と意図をもって集められた集合体の方が、作者の執心とか偏執とか、「想い」が如実に出るから、かなぁ。どこを切り抜き、何を排除しどれを残し、何とそれを組み合わせ、どう配置するか…そこに、作者本人の何かが透けて見えそうだからかな、箱庭療法的に。頭の中を覗き見る感じ? どうかな。違うかな。でも、不快じゃないのです。もっと見たくて仕方ない。
 3周くらい出たり入ったりしてしまいました…見飽きなくって! ピアノボックスの天使の朔像が暗くてよく見えなかったり、蝶の標本が図版で見た記憶よりも朽ちていたり…残念やら心配やらもありますが、でも本当に満足です…目の裏に☆がちかちかしてるよ…。
 コーネル展が第1の目標なら、第2の目標はミュージアムショップで! 今回の企画に合わせて発行された図録兼詩集に、専用のペーパーナイフとか、マストバイですよもう。ぶるぶるするくらい可愛い…!


 フランス綴じ、というのは、仮綴の一種で、裁断される前の状態で綴じてある状態です。たまに裁断ミスで、ページの縁が袋状になったままの本があったりするじゃないですか。ああいうのです、ページが折ったまま綴じられていて、自分で切って開くの。その為のペーパーナイフが売ってるの…たまらぬ。買う時に一瞬、開ける用ととっとく用…と2冊買いを考えなくもなかったのですが、けっこうお値段したし、いやいや…と思いとどまり1冊しか買わなかったけど、やっぱり…開けられないです(笑)。でも読めない…開けたい…がもったいない…。タイポも紙もリボンも何もかも可愛くて素敵。
 ペーパーナイフは黒檀のオウムの形のを買いました。らラス1だったようで…欠品中になってますね…スイマセン。白い貝のにするつもりだったんだけど、展示見たら「コーネルなら鳥だよね☆」ってなってしまった(笑)。あとはポストカードセットと、バラ売りのカードも追加で。あとは本が欲しかった…けど、書店でもアマゾンでも買える!と我慢しました。いつか買うんだ…!
コーネルの箱

コーネルの箱

 あとさっき見つけたこれ…自分でコーネルボックス(っぽいもの)を作れるキットになっているらしい(笑)。面白いんだけど…自分で作る、「ぽいもの」はちょっと違うかな〜。でも興味ある!
The Joseph Cornell Box

The Joseph Cornell Box

 今回の展示に関しては、こちら↓が非常に詳しいです。会場内の写真とか!
「ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎」 | 弐代目・青い日記帳
 コーネル作品はこちらWebMuseum: Cornell, Josephとか、あとこちらPEM | Joseph Cornell: Navigating The Imagination Launch Page(ピーボディ・エセックス博物館サイト内。「Launch Site」をクリックするとインタクチブな何か面白いのがあります)とかからご覧下さい〜。可愛い〜。
 コーネルボックスが作れる本、のサイトThe Joseph Cornell Boxでは、自作用の素材とか、コーネル的壁紙とかがDLできます。面白い! 早速壁紙を変えてみたよ!
 で、すっかり星空のコーネル世界に浸りきったところで、お外に出ると新緑眩しい昼下がりで。お庭散歩しましたが、それでも星がチカチカしてた…。お庭は花がいろいろ咲いていました…がその程度の感想しか出てこない(笑)。藤棚が満開ちょい過ぎくらいで、風がいい匂いでした。睡蓮は「ひつじ草」という種類で、未の刻=午後2時頃に花を咲かせるからこの名がついたそうです。ちょうど咲いてた。

 そして散策していたら、木陰に20センチほどの黒っぽい塊が。ん? 石? きのこ??と近づいてみたら、カメだった! のしのし歩いてた! 池からずいぶん離れてるのに…そして池とは逆方向へ歩き続けるのでした。彼はどこを目指しているのだろう。今彼はどの地を歩いているのだろう!

 片道2時間半ほどの小旅行でしたが、疲れはしましたが、大変有意義でした。うーん、次はとりあえず…国立近代美術館かな。変身新潟公演時に新潟市美術館も行けばよかったー!

*1:良くなかったらやめようと思ってた

*2:コラージュ

*3:他、東京国立近代美術館新潟市美術館広島県立美術館にもあるようです

*4:えええええ

*5:自然と息を潜めてしまう空間なの

*6:っていうか私