ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「変身」初日&2日目感想

 レポ、にならないんですよね。あのシーンが今日はこうだった!みたいなの、ないんですよね。だから、とりあえず初日と2日目を観た時点での雑感メモということで。ネタバレまくるので畳んでおきます。
 
 
 
★この先ネタバレあり★
 
 
 

  • 幕が上がり、ゆっくりとグレタの背後へ歩み寄るグレゴールの動きが、美しくて美しくて! 息を呑んでしまう。パントマイム的な、自然な動きではない、不思議な動作なんだけど…衣装風貌と併せて、どうにも自動人形のように見えてしまうのです。自動人形と書いてオートマタと読む的な*1
  • センター奥から手前へ歩いてくる時の足がね、完全にバレエですよね。一歩ずつ4番で歩いてるようですよね。緊張感のある、張り詰めたような音楽と、白い光で満たされたステージ上で、何かもう…綺麗なちょっと怖い、不思議な夢を見ているような気になる。
  • 人の時のグレゴールの動きがひたすら美しいから、虫になった時との落差が際立って余計に…凄いんだな。虫も人もどっちも凄いんだな。
  • 「彼らの運命は、僕の肩に、重い錘のようにのしかかっている」…人グレゴールのこの台詞が、後半に完全に反転して、「僕という存在は、彼らの肩に、重い錘のようにのしかかっている」になるのが…虫になったことはある意味、グレゴールの逆襲なのかもしれないなんて思ってしまう。その逆襲は最悪の形でしか成就されないけど。
  • 音楽というか効果音というか、面白いですね! 時計の音だったのがそのまま、雨だれの音になったり。
  • お父さんの足音は低いティンパニみたいな音で、グレタの足音は軽快なコココココッって音。なーんかこれ、何かに似てるなぁと思ったら…タラちゃん…(笑)。
  • 出会いがあるけど友達になる前にすれ違う、ってセールスマンの仕事のことを云う時の、ぐいーんとぐねーんとした動きがかっこいいです。凄いです。
  • …グレタとグレゴールの最後の接触、もっと云うと人グレゴールの最後が、グレタの額へのキスなんですね…何か、切ない。
  • 「お休み、グレゴーーーーール…」って長く伸ばす所の、久世ママと穂のかちゃんの声の重なりが、すっごい微妙な音でハモっててめちゃくちゃ美しいです。初日に偶然なのか?と思ったら、日曜日も同じ音*2で重なったから、そういうことになっているんですね! 大好きだあの音…。
  • そして何故かあんまり重なっていないお父さんの声(笑)。それもわざとなのかもなー。
  • 穂のかちゃん、映像も声も何もかも、全くまっさらな状態での今回だったので、期待も心配もしようがなかったのですが、いいですね! 初舞台とは思えない、堂々とした居方で! 台詞もよく通るし、動きも綺麗だし、危なげないし…安心して見ていられました。
  • 久世さんはリチャードで拝見していましたが、もう全然安心です。けあきママを思い出すような、正反対なような(笑)。
  • あ、けあきママと云えば主任の福井さん! とりあえず、あの、後ろで組んだ手をぺちぺちぺちぺち鳴らすのが、すっごい気になるというか気に障るというか! 生理的にイヤだ(笑)。
  • グレゴール虫の前脚が動く時は高いマラカスの音、後ろ脚が動く時は低いマラカスの音。これすごいよなーカサカサ云ってるもんなー。
  • グレゴールの部屋の台形の台座(?)はクッション材になっていますね。じゃないと頭とか色々痛いものねー。やたら三点倒立的格好になるからね! 頭突いた時にちょっと沈んでて安心した(笑)。
  • シルエットの使い方というか、影絵みたいになる所とか、すごく綺麗で、綺麗だけど何と云うか…戯画化されているみたいな、皮肉っぽい客観的な俯瞰の視点が付け加えられているような感じもする。
  • 虫グレゴールが懸命に喋る所、初日はものすっごく…バグってた。CD傷ついてるしテープは伸びてるしレコードは針飛んでるし、みたいな(笑)。日曜日は多少、もうちょっと、聞き取りやすくなっていた。
  • でも、どっちにしろ…すごく困難な状況であることは良くわかるので、息を止めて見てしまうのでした。最後の「頂けませんか」のカが出ると、ふぅ…と息をついてしまう…。
  • 「具合が本当に悪いんだー!*3」は…もう、人間の言葉には聞こえていないんですよね…悲しい…きっとみんなにはギチギチとしか聞こえていないんだ…。
  • とにかく虫グレゴールの前脚表現が。気持ち悪いけど美しい。指のアレが何かもう…たまらない。家族が喋っていたりする、グレゴールでないシーンでも、常にあの手指はカサカサぴくぴく動いてるんだよね…。
  • でも主任の足に虫グレゴールが前脚を伸ばす所は、うん、…うわあああああ!!!ってなっちゃう…。
  • あと「お母さん。…おかあさん」って呼びながら母親の方へ近づく虫グレゴールの顔が! 顔はお母さんの方を向いているんだけど、目が違うとこ向いててすっごく…虫です…虫の複眼がどこ見てるのかわからない感じで…本能的な生理的な恐怖と嫌悪を感じてしまう。ていうか未來さんすげー。
  • 「身体がべちゃっと潰れた!」の声がまた、すんごい…べちゃっとしていて…ぎゃああああ。
  • あと、虫冒頭の「腹にぶつぶつがある。…かゆい!!」も…ぎゃあああああああああ。
  • 何と云うか、生理的な嫌悪のツボを絶妙に突いてくるんだよ…絶妙に、しかもこう、ずぶっとダイレクトにではなく、じんわり…と…恐ろしい…。
  • えーと、怪我する前か。虫になって最初の辺りか。グレゴールが仰向けになって、前脚と後ろ脚を交互に閉じたり開いたりするの…うーんと、クワガタの角みたいにがしゃがしゃさせるの。手をクロスさせた時は足を開いてて、足をクロスさせた時は両手広げてる、みたいな…のがあるんですよ。ありますよね。そこが、シルエット的にすごくかっこいいというか、チラシの「変身」タイポで鏡になっている部分*4がある、アレっぽくて…好きです。
  • 足怪我したグレゴールの「なおるかなあああああああ」も好きです。でもかわいそうです。
  • わたくしまだ、オペラで顔などガン見していないのですが、ちょい後方から顔ガン見したお友達によると、色々と物凄い顔面だそうです。見たい!
  • 顔に限らず、声というか音も…いろいろ出してますよね。食べる音とかね。スクデイメイキングのあひるちゃんを思い出した(笑)。
  • 「まんざらでも、ない…喜びだった」この云い方がたまらない! 何て上から目線! 自分すらも見下げている、全てを超越した上から目線!!
  • グレゴールのことを疎ましく思っていることを「絶対に気づかれちゃダメ!」と云う母、「絶対に思っちゃダメ!」というグレタ。何か…この時点で…母は疎ましく思っていることを、自覚してないけど認めているんだな。グレタは、そういう思いが芽生えそうになるのを押さえ込んで否定してるんだな。
  • 食べ物をかき集める家族に、いちいち「いーぞぉ!」と声を上げるグレゴールが、とても楽しそうです。いちいち、いーぞぉ!の云い方違うし(笑)。ううううう、いーぞーおぅ!って…牛乳は嫌いなのにホワイトソースがかかってるシチューはいいんだ…。
  • そいえばミルク舐めグレゴールが物凄い顔をしていそうだった。あと、牛乳「べえええええ!!!」てするのは、程度の差こそあれエドガー的でちょっとキュンとした(笑)。
  • 「ベッド下に隠れているグレゴール」のポーズが、両足を両サイド鉄骨に掛けて前足を床に突いている格好で、それどうやってベッドの下にいるんだ? どうなってるんだ?と物議を醸した。
  • しかしグレタとグレゴールなら、もうちょっとで意思の疎通ができそうだったのに…できてもやっぱり、ダメだったのかな…そういう問題じゃないか…。アルファベット盤とかあれば、会話できそうなのになぁ。
  • クリスマスのグレゴールの美しさったらない。お母さんへ伸ばす指先の優雅さったらない。神々しいまでに美しい。人の美を超えたところにある美しさだよ…。
  • …真顔ですが何か。
  • 芝居がかった*5云い回しも素敵です。中世ヨーロッパの空気が漂うよ何だか。あの大仰な感じが。モーツァルトヅラとか被っても似合いそうだよもう。
  • ハバナの葉巻」の時のポーズがたまらなく良いです。手の美しさが際立つ!
  • グレタというか穂のかちゃんがもうちょーっとバイオリン真似上手だと嬉しいのですがー。そのサイズはかなりデカいヴィオラだよ…。あとせめて音が伸びている間は弓を返さないでほしい…とかすいませんほんっと重箱の隅っていうかもう蓋の裏ですよね。
  • 投資で儲けたお金で夢を見るグレタとお母さん。の、夢が破れて、ピアスを外して服を脱ぐグレタのふくれっつらがかわいそうだけど可愛いです。ピアスぽいっと捨てるの可愛い。
  • グレタに話しかけようとして逃げられた後のグレゴールがすっごく辛い。「お前なんか嫌いだグレタ」とか…虚勢を張っているのがわかるもの。そうやって高飛車に考えていないと保てないんだ。自分が嫌われているんじゃなくて自分が嫌ってるんだってことにしておきたいんだ。
  • ハエ的なものを捕食するグレゴールが…大変美味しそうに召し上がってらして…ひいいいいいい。
  • でもこの辺から、グレゴールが徐々に虫である自分を受け入れていっているようで、悲しい。人間としての意識が薄れ始めているようで。「朝起きて、自分がグレゴールだと思う時がたまにある」とか…。もう、たまに、なんだ…。
  • でもその意識はあるんだよね。人間だったことを忘れてしまう恐怖感はね。だから家具をどかさないでほしいって思うんだよね…。
  • 母親とグレゴールが壁越しに寄り添うところ、が…すごく悲しい。いまいち、このお母さんのポジションがよくわからないんだけど…虫になっても息子としての愛情が消えるわけではない、けど、その割りに丸投げだし…グレゴールを気遣うのも、本当に息子が心配なのか、それともグレゴールにもう気に掛けていないと思われるのがいやなのか、わからないし…そもそも、グレゴールに感謝しながらおんぶに抱っこだったわけだし…全部なのかな。いや、想像もつかないほど複雑だろうということはわかります、最愛の息子がある日突然虫になったら…ねぇ…。心底疎ましく思う瞬間も、心底愛おしく思う瞬間も、あるんだろうな…。
  • 部屋を出ちゃったグレゴールが天井から落ちてくるところ、は、…やるか。やるよな。でも高いぞ…。とハラハラしました。うん、まぁ、やるよね(笑)。どうか怪我なく千秋楽を迎えられますように!!
  • テーブルの下に隠れたグレゴールが、テーブルをどかされてアワアワと逃げ惑うのとか、椅子の下に頭だけ突っ込んで隠れてるつもりなのとか…虫なんだけど、そしてとっても虫としてのリアリティ満載なんだけど、それでも…かわいそう可愛い…。いじましいんだ…。
  • リンゴを投げつけられて、小さく縮こまるグレゴールが…これまたすっごくリアルに虫で…ああ、虫ってこうなるよね…と薄ら寒い思いをしてしまう。死んでる虫って手足縮こまってるよね…。
  • 「お父さん、あれがあなたか!」グレゴールの独白が…こういう切ないのは何かもう、おまかせですよね。泣ける。エドガー発展形。
  • そして未來さん舞台上で死ぬ役記録更新。さらに父親との葛藤記録も更新。ついでに人外役も更新。
  • リンゴを取ってやって、と母に頼まれたグレタが、「明日!」って云う辺りから、ああもうグレタも限界近い…ととても悲しい気持ちになる。そして母の丸投げっぷりに怒りを覚える。でも、自分がそういう状況*6だったら、グレタほどできる自信もなく…怖い現実を突きつけられる話です…。
  • 父親が「あれはただの汚らしい虫だ!」って云うのが、決定打ですね…。
  • 舞台セットの骨組みが、色んな効果を持っていてすごく面白い。舞台の中央に向かって、強調されたパースが無理やり付くから、グレゴールの部屋が「廊下の突き当たり」「一番奥の」部屋っていうのが視覚的にわかるし、シルエットになった時の蜘蛛の足っぽさもすごくかっこいいし、その蜘蛛の足みたいな中*7に閉じ込められてそこから抜け出すことのできない家族、というのも象徴的に描かれるし、家族を覆いつくし支配するグレゴールという存在、も暗示できるし、あと父親が真ん中に座った時の影が、大きく広がるのも、父親の権力の大きさを表しているようだし…あと、上からの照明で舞台の床の上にも骨組みの影が落ちて、それがさらにパース付いて見えて…すごい。アレだけのシンプルなセットなのに、全て表現して、した上で想像力もかき立てる。
  • えーと。下宿人。あの、登場の長さが…耐えるの辛いです(笑)。丸尾さんも大変だろうあれ…。
  • そして飛び道具だな! 田村正和とか、ロッキーのテーマとか、どうなんですか(笑)。去り際のサルのまねとかもどうなんですか。犬猫リス?ワニ?とか、もういっぱい!くらいはまぁうん…ですが。いや、ロッキーも田村もわたしは笑いますけど。
  • 一応あれですよね、下宿人さんは都会的で洗練されていて上流なんですよね(笑)。おっかしーなー人グレゴールの方が全然洗練されて美しいんだけどなー(笑)。
  • 「僕はケダモノじゃない!」は…エドガーを思い起こさずにはいられないよ…!!
  • 「お前なんか嫌いだグレタ」って云ったのにね…彼女を助けようとしたのにね…。母にも妹にもシッシッて云われるの…。そんでグレタに「アレを始末して!」って云われるの…。
  • でもグレタの翻意も…わからなくないの…だから辛いの…。
  • 傷ついた身体で部屋に戻ろうとするグレゴールが痛々しい。部屋に入ろうとして上がれなかったりするの…。
  • 死の間際に、優しかった頃の家族の顔を思い出すグレゴールが悲しくて悲しくて…虫として死ぬのだけど、しかも家族に疎まれて、ある意味殺されたのだけど、それでも人としての綺麗な幸せな思い出を、最後に抱いて死んだんだな…。
  • そしてやっぱり母親がわからない。「子供が親にすがるような目で私を見ました」とか云ってるのに、「あの子をもう解き放って」とも云っているのに、その辺りの言葉は、哀れな子供に対する母親の悲しみと愛情に満ちているように思えるのに、なのに最後は「お母さんを恨まないでね」なんだ…むずかしい。
  • 「自由になるのよ、自由に」という母の言葉が、グレゴールに対して云っているのだけど、自分たちのことを云っているようにも聞こえて、そうなるとグレゴールにさっさと逝けと、逝って私たちを解放しろと云っているようにも聞こえて…むむむー。
  • でも、死はグレゴールにとって確かに、唯一の救いであり自由、解放であった、だろうし…元に戻ることがないのなら、ね…。
  • そして、残された家族たちは確かに、解放されて、自由になって、そのありがたみを感じている。それを喜んでいる。何か…いろいろ考えてしまう。
  • そして、死んだ虫は「いなくなったグレゴール」として家族に再び受け入れられる。虫は、なかったことになるんでしょうね、この家族の中で。
  • ラスト、青白い光の中で、ゆっくりと手足を縮めるグレゴールが…ねぇ。あれはクロッカスのつぼみだよねぇ。咲きそうになっているよねぇ。きっとグレゴールの骸からクロッカスが咲くんだ…。
  • このシーンで、今まで「綺麗なもの」「美味しいもの」「素敵なもの」の時に使われていた、キラキラした音が鳴るんです。グレゴールの死骸が小さくなる時に。…死んで、虫から解放されて、やっと、素敵なものになれたのかな…とか、もう、たまらない。だって、綺麗だものグレゴール。
  • カテコはとにかく、久世さんを呼ぶときの手が。もう。マイムというか美しい。あと、ハケる時の足取りも美しい、いつもの未來さんじゃない歩き方してるの…。
  • 2回目くらいから、表情が緩むので、こちらもホッとします。穂のかちゃんの笑顔が可愛いんだ!
  • 初日は最後にぞんざいな(笑)お手振りをぶぶんと、日曜日は軽く手を2回くらい打ち合わせて、そのままお参りみたいな手を軽く振りながらハケていきました。久世さんたくさん手ぇ振って下さって素敵だなぁ。
  • とにかく、カテコ時の未來さんの表情の充実っぷりが。手ごたえ感じてるっぽいのが。何より嬉しいです。これは充実するよね!

 えーと、あまりこう…日々レポをするような舞台ではないので…どうですかね。感想文です。日替わりとかないしなぁ(笑)。今後も、じわじわ思ったことを記録してはおこうと思います。

*1:意味不明

*2:西洋音階になさそうな音程なんだ

*3:だっけ? 良くないんだ?

*4:漢字のはらいの部分

*5:いや芝居だけどさ

*6:いや虫とかはあり得ないんだけどさ

*7:=一家の部屋