最後のマチソワでした。見終わるとどうにも、顎関節が痛くなる芝居だわ…。
今日はソワレのカテコで突然、涙が止まらなくなってしまった。何度観ても、結末が変わることなんてないのはわかってるんだけど、どうしても…悔しくて。観れば観るほど、出口を見つけられない迷路に毎回はまり込んで出られなくて、正しいルートを見つけられないまま放り出されるような気分になります。…正しいルートなんて存在しないんだけどさ…。わかってるんだけどさ…。
マチソワざっくり置いておきます。
マチネ
- 少年時代はまみれでさんざん振り回された、そうで…ゆきちゃんお腹弱い子だったんだね…。
- ちょこちょこセリフが増えていました。桃子に「しーっ」てする久留美を見て赤地が、「それは俺に何か内緒にしようという…?」てもにょもにょ云ってたり。
- 土手を降りてくる久留美を「だめっ!」て止める桃子が、久留美の「あの上に登るとかー?」っていうのに「そんなとこ登れませんよ」って応えたりとか。
- 「あいつは変だ、変態だ!」は平泉もしくは秀治っぽく。
- 片手間っていうんだ!で行人のグラスビールがこぼれる。なみなみ入ってたからね。
- それを布巾で、テーブルの上も畳の上も拭くゆきちゃん。
- 母を足蹴にする行人、蹴飛ばしたスチロール箱がくるくる回りながら高く舞い上がった。ついでに穴が開いた。
- やっぱり桃子は、栄太郎さんに行人とのことを咎めてほしかったんだろうな。嫉妬してほしかったんだろうな。「夫に愛されて幸せな自分」に自信が持てなくて、それを確認したかった…自信が持てないのは、その幸せがお互いの欺瞞と自己犠牲の上に成り立っていることに薄々気づいていたから、だろうけど。それを何とか否定したかった、んじゃないかな。
- 「『そうか』ですませちゃっていいの…?」ていうのとか、嫉妬でもすると思ったのか?と訊かれて「さあね、どうかしら」とか…桃子のSOSに聞こえる。本心に気づいたら、おしまいだと思ってるんだと…。
- 死んでしまってからは、本心と向き合えるんだけどね…。
- …ゆきちゃんまたハゲできちゃうね…。
- 桃子の舌打ちがちょっと気になりました。小屋の前で「これが迷惑だっつってんの!」の時は毎回だから、そこはいいんだけど…生乾きのシャツを取り込む時に「もういいや」って云う前にも、その後端っこのタオル?2枚を触って確かめた時もしてて…ももちゃん?て思った…。
- 行人に掴まれる桃子の、脚のか細いこと…! 一握りだよねあれ…。
- 「あんたもうダメだ」…やめてあげて!て思う。ゆきちゃんが壊れる。決定打というか、とどめというか。
- 桃子はある意味、行人を使って自分を解き放つ。出口のない小さな世界から解放され、変わらない「先」から逃れる為に。行人は何も変わらない、手に入るものは何もなく、閉じ込められた世界から出る術もなく、ただ…その中で、壊れていく。
- 赤地に金を渡すところ、作業着の前をかき合わせて、シャツの血を隠していました。今までそのままで、赤地は携帯に気をとられてて気づかない、みたいな印象だったんだけど。
- 手を洗う行人、水飛沫がキラキラ飛んで、綺麗で…悲しくなるよ…。
ソワレ
- 「怖い顔して見せた! ゆきちゃんが私に!」の桃子の声が、高い作り声になってました。
- う○こ話*1中に、石段に座り込んだ道也が草をむしってました(笑)。
- 久留美に「ことわっちゃえよ〜♪」てくねくねツンツンしながら云うところ、「付き合っちゃ違う、ことわっちゃえよ〜」って! ゆきちゃんが!
- 久留美ちゃんも笑ってました。可愛かった(笑)。
- 作業台に向かう行人の横顔が…長い前髪の下からゝな鼻先が覗いて…美しいったら。
- 「お前は中も外も気持ち悪いなぁ」てねっとりするの、べたべたを栗尾に擦り付けて拭いてるんですか。
- 部屋に上がって右足の指を気にするのは、バケツ蹴って痛かったからか!
- 木刀振ったら手が痛い。バケツ蹴ったら足が痛い。股間殴れば拳が痛い*2。何かしたらその感触が必ず返ってくる…それが、「なんとなく」の殴った感触ゼロに繋がるのか…とぼんやり思いました。
- じゃあ、殺したらその感触は。それを消したくて行人は執拗に手を洗う…?
- えーと、戻って。「変態だ!」はやっぱり秀治もしくは平泉で。
- 「ビールを注ぐ」というのは兼坂家に於いて、相当重要な意味を持つ行為なんですね。和佳ちゃんに注がせるには正座で受ける。謝る代わりにお酌する。…よくわからないコミュニケーションだな(笑)。うちお父さん手酌で飲んでたし。
- ありがとうな、と行人に礼を云う父親、やめろよと照れる行人、を冷笑で見る和佳。行人の行動の理由を知ってるから、あんな冷ややかな目で笑うんだね。
- で、行人を「社長に似てきた」と云う父親を、すごい顔で振り返るの。「何云い出してんの!?」て顔するの。…和佳ちゃんにとっては、お父さんも社長もひとりだもんなぁ。
- 輝紀との乱闘。めくれ上がったシャツの下の、背骨の窪みが美しい。
- 電話台の椅子に座る前、移動しながらゆきちゃんが、右耳から水を抜く仕草をしていました。右耳を下に向けて、右側頭部を右手でトントンッて。てるちゃんにぶっかけられた麦茶が耳に入っちゃった?
- 不法投棄の自転車を「よく捨ててくれたよ!」て云った瞬間におよだがぽたり。
- カーテンがまだらに染まって、やけに綺麗でした。上からじわじわびっしょり、じゃなくて。
- 上手側の作業台から落ちた黄色いプラケースが、乱闘中*3に舞台から落ちた。びっくりした。
- 左頬にうっすら血のついたゆきちゃんの白い顔が、何も感情のない目で桃子を見下ろすの…ぞっとするほど綺麗だった…。
- 最後の一突き前に、握っていた封筒が桃子の手から落ちちゃった。それは…最期まで放しちゃだめだと思うの…。
- 桃子の死体を跨いで封筒を拾いに行く行人。何か…ぞくっとした…。意味を為さないただのモノ、みたいな扱いに見えて…。
- 転換中の、白い光の中で立ち尽くす行人が、絶景でした。
東京前楽マチソワ、という気が全然ないまま、です。でも、ただ見てることしかできない、という観客の当たり前な、でも圧倒的な無情感の前には、回数なんて意味がない。何度観たって救えないんだもん…!
芝居見てこういう気持ちになるのも、初めてです。「観ていることしかできない」という、ごくごく当たり前の状況が、こんなにも辛いなんて…。