ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「桜姫」現代版@シアターコクーン

 脚本が長塚圭史大竹しのぶ古田新太秋山菜津子白井晃中村勘三郎笹野高史が出演で演目が桜姫、こりゃ観るでしょう。というわけでマチネ観てきました。貧乏人はコクーンシート*1観劇でしたが、確かに見づらいしセリフも反響大きくて聞き取りづらいところもあった*2けど、お値段考えたら全然ありがたい〜。S席の半額以下だもん文句ありません。
 ネタバレほとんどしていませんが、一応畳んでおきます。

 南北のあらすじは何となーくうっすらーと頭に入れて、「現代版だけど舞台は日本じゃないらしいぞ」くらいのネタバレ予備知識で臨みましたが、あらすじ知らない方が良かったかもなぁ…と思いました。けっこう筋が違うというか、結末も変わってるし、どの役が歌舞伎の誰にあたるか、つき合わせるのに一生懸命になっちゃって、もっとそのまま入り込んだ方が面白かったような気が。「現代版」というよりは、ひとつの「長塚作品」になっているように感じました。ので、長塚節は堪能した! 阿佐スパ作品のリアルな会話劇セリフと、「失われた時間を求めて」を彷彿とさせる抽象的な、文語みたいなセリフが入り交じっていて、その違和感が心地良い長塚節でした…面白かった…。
 現代版、となっているけど、印象としては…ファンタジー版? 異世界版? 現代…とも云いきれない、いつとも知れぬ時代のどこかの国の話、みたいな世界観になっていました。崖の「上」と「下」という設定も面白いし、普通の(?)現代社会じゃない「現代」世界は、原作のドロドロしてて不条理な展開にはむしろちょうど良い感じ。悲劇でも惨状でもどん底でも、どこか笑いを含ませられるのも、ラテンの空気あってこそ、なんだろうな。場面転換や冒頭、ラストなどに挟まれる生演奏も、陽気だけどどこかもの悲しくて、気怠い懶惰な雰囲気もあってすごく良かった。笹野さんのトランペットは素晴らしかったし!
 大竹さんはさすが、もうすぐ16の娘から娼婦、老婆までを軽やかに自由自在に、時に可憐に時に淫靡に演じてて、圧巻。もうすぐ16の娘役の「…ん?」な感じを逆手に取るのも面白かったし、狂言回しの役と主役の間を行き来する、切り返しも鮮やかでした。ブルーハワイ(笑)のグラスを倒すのは毎回なのかなー。古田さんの食いつき&ツッコミようがものすごくて、アドリブなのかいつもそうなのか判断つかなかった(笑)。ラストの演奏で、ヴァイオリンの彼にアインザッツ*3出す時、ゲネラルパウゼで無音なはずなのに持っていたベルがかろんと鳴ってしまって、あわてて手で押さえて止めて、改めて合図出すのがすごく可愛かったです(笑)。笹野さんは何だろう、精霊みたいなポジションで(笑)。すごい可愛らしい、キュートな存在だった! 出てくると嬉しくなる感じでした。しかも魅惑のトランペット、哀愁の音色…たまらん。秋山さんは格好良く凄絶で色っぽく、なのにマングース(笑)まで振り切ってらして…素敵だった…古田さんとの濡れ場は大変セクシーでございましたよ…。古田さんは相変わらずの安心感で…セリフが流れるから聞き取りづらいトコロもあったけど。小悪党の残念さと強かさ、それでも憎めない感じはさすがの古田さんです。後半の変わり果てた姿(笑)も……そうならないで下さいね…と思いました…。白井さん、真面目な聖職者なのにその真面目さが可哀想でオモシロになってしまう前半と、大竹さんと出会ってから露呈しまくるダメ人間全開な後半のギャップがたまらなかったです(笑)。むしろ彼とジョゼ*4の話が知りたいわ(笑)。勘三郎さんは、出てきてしばらく気づかないくらい…イメージが。ルックスのイメージが違ってた…よーくお顔見たら勘三郎さんだった(笑)。セリフ回しというか、発声法? なのかな? やっぱり現代劇の役者さんとは少しメソッドが違うようで、歌舞伎っぽいなぁと思う部分がたまにありました。でも、悪人だけど憎めない、カラッとしたラテンなノリは何故か違和感なかったなー。
 ラスト、「自分が幸福を感じる時、どこかでもうひとりの自分が不幸になっている」「だから後ろを振り返り、もうひとりの自分を探す」的なセリフに導かれて、白井さんと勘三郎さんが表裏一体になっていくシーンは飲み込まれました。「どこかでまた、すれ違おう」で呼応していく2人ずつ、も面白かった。長塚作品的ラストのカタストロフは感じられなかったけど、美しい情景でした。
 あと、狩人? オカッパの二人(笑)から目が離せなかった! 可愛いんだかキモいんだか美人なんだか何なんだかわからないけど好き!(笑)

*1:5000円

*2:特に古田さん…

*3:曲頭の入りタイミングのこと。せーの、的な

*4:=白菊丸