ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

花の下にて春死なん

 日曜日、天気も良くてあったかくて、桜は満開で、今日を逃したら今年はもう桜を見られない、と近場をぶらりと花見してきました。近所の大学の桜が綺麗でねぇ、日曜日誰もいなくてねぇ。去年か一昨年にも小雨の中、ひとりで行ったところです。今年は母上と一緒に。風が止まると、微かにふわりと桜の花の匂いがしましたよ。桜餅の匂いから、しょっぱさを抜いて、すこーしだけ甘くしたような匂いです。中学高校の頃、部活の春合宿が終わって、大荷物と楽器*1抱えて歩く井の頭公園で吸い込んだのが懐かしい…今じゃ井の頭公園の匂いはアルコールとおつまみの匂いですけどね(笑)。
 門の上には「祝入学」の看板がありました。月曜日は入学式なのかなー。あ、入る時はちゃんと、守衛さんに許可頂いて入りましたよ。桜見せてくださいーって(笑)。入口の桜も綺麗だけど、奥の方にあるグラウンドの周囲がぐるりと桜で、気分はリボルバーな感じなので、そっちまで侵入。緑が綺麗な芝の上では、ご家族連れが一組、シート広げてお花見してました。いいなーブルーシート(笑)。お酒飲んでみんなで大騒ぎのお花見もいいけど、お茶とおやつと読みかけの本持って、木の下でごろごろしながら本読んだり昼寝したりの花見がしたいなぁ。おやつは焼き立てのバナナブレッドとかでさー。ああベイキングパウダー買ってこなきゃ。


 花見妄想はともかく。頭上に覆いかぶさるような桜をあんぐりと見上げ、並木になっているグラウンドのぐるりをぷらぷら歩いていたら、足元に小鳥の死骸が落ちていました。小鳥というよりは中鳥くらいのサイズでしたが。ヒヨドリね。野晒しじゃ可哀想だし、ロケーション的に桜の下なので、これは…埋めるよな、死体埋めるのは桜の下だよな、と母上と二人で埋葬していたら、ご家族連れの女の子、小学2年生くらいかなぁ、が手伝ってくれました。見るなり「あ、ヒヨドリ」って云ってた、物知りだなぁ。いろいろ話してくれるお嬢さんで穴掘りしながら楽しくおしゃべりしてくれました。可愛いなぁと内心目を細めつつ、わたしこのくらいのお年の頃、知らない人と口なんか利けなかったなぁ…と、見知らぬおうちのお嬢さんに軽い尊敬の念を抱いてしまった。
 土は少し掘ると、固い粘土の層が出てきてしまって、小枝とかで非常にプリミティブな感じにえっほえっほと掘っていた我々には太刀打ちできず、結局浅い穴しか掘れなかったけど、それでも野晒しよりはきっと多分いくらかましだろうと、小さく盛り土して小鳥を埋めました。来年きっと綺麗に咲くよ。そして彼女は鉄棒の方へと駆け去っていき、母上は「願はくは花の下にて春死なん」と西行を呟き、私は「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」と呟き、母はそれを坂口安吾だと云い*2、私はいや違う安吾じゃない、安吾桜の森の満開の下だと云い、それが屍体が埋まってるんじゃないのかとかいや違うはずだとかじゃあ誰だとか確か梶井基次郎…とか梶井は檸檬でしょうとか檸檬って智恵子抄…じゃないよなあれは高村だもんなとかじゃあ梶井の檸檬はどんな話だとか、何かぶつぶつ云い合いながら帰途についたのでありました。
 そしたら件の少女が駆け寄ってきて、「これあげる」と桜の小枝をくれました。すごくいい匂い。

*1:オーケストラ部でした

*2:ついでに悪趣味とか不健康とか