ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

M.M.M.「SKIN#5 VIDEO MIX」

 いえ、VHSなのでカテゴリが違うんですが…でもビデオのカテゴリなんて作ってないし…映像作品なので一応…ごにょごにょ。
 えー、1980年代アングラ演劇シーンに燦然と異彩を放つ、「東京グランギニョル」という劇団がありまして。もちろん当時まだいたいけなガキンチョだったわたくしは、リアルタイムで知ることなぞできませんで、遅れること10年ほどで、どういうルートだか忘れましたがやっとその、すでに失われていた存在を知ることになり、耳目にするのは数枚の写真とキャプション、評論と当時を振り返るインタビュー、そんなものしかなく、それでもその限られた情報から何かを嗅ぎ取り、ああ見てみたかった、どんなんだったんだろう、ていうか見てみたい、とうすらぼんやり*1思いつつさらにずいぶんと歳月を重ね、本日に至るわけでありますが。
 今わたくしの手にある、1本のVHSテープ。それは、東京グランギニョル解散後に主催の飴屋法水氏が新たに旗揚げした、M.M.M.という劇団*2の、「SKIN」というシリーズ舞台の、映像用にリミックスされた作品、なのであります。おおおおお。まさか目に出来る日が来るとは思っていなかったああああ。
 VHSのアナログな、若干粗さの目立つ*3映像で、初めて観るM.M.M.は…想像通りの、インダストリアルでノイジーでヴァイオレントリィで血みどろで、メカニカルでフェティッシュな…そして80年代な舞台でした。面白かった。これ当時生で見てたら絶対ハマるわ(笑)。嶋田久作さん*4 *5が俳優業をスタートさせたのがグランギニョルで、M.M.M.にも引き続き参加されているのですが、この「SKIN#5」の元になっている「SKIN#3」の舞台中が確か、映画「帝都物語」撮影時期と重なって、その為に嶋田さんの存在がまるっと機械化されて嶋田マシーンが舞台を自走するという…すごいんだ。面白いんだ。もう、この「嶋田久作マシーン化」というのが何か、全てを象徴しているような。素晴らしい。たまらない。しかも自走式なんだよマシーン。ブラウン管に嶋田久作の顔が映ってるんだよ。しゃべるんだよ。走って動くんだけど気分としては高専ロボコン大会見てるような…こ、壊れない? 大丈夫? パパ平気??*6という…ああ面白かった…! 何かわたし、ニヤニヤおもしろがってるみたいに見えますが、ほんとに面白かったんだよ? そりゃ20年前の作品なので、テクノロジー的に古い部分は多々ありますが*7 *8、でもそのスチームパンク的メカニックもまたかっこいいんだ…視神経から直接電気信号で網膜ディスプレイ化、とか云ってるのに画面は灰地に白文字とか…たたたたまらん(笑)。
 ストーリーとしては、工場廃墟みたいな秘密基地で、「死」の解釈で遊ぶ少年達の元に、彼らの中のひとりの父親の死が告げられ、骨壺が届けられる。生物学者である父は、実験中の事故で死んだと云われるが、その骨壺の中には遺骨ではなく1枚のフロッピーが入っており、そのディスクに隠されたメッセージに導かれ、少年達はとある研究所を訪ねることになる。父親の死を信じられず、どこかでまだ生きているはずだと切望する少年の前に現れたのは、…はい。嶋田マシーンですよ。パパですよ。機械化された父と、父の実験の結果である異形の男達を前に、人間とは何か、存在とは、生物学的な存在と人間的なそれの差違は、そして最後に少年達の選んだ道は…?
 …的な! すいません上手くないなあんまり(笑)。
 個人的に、嶋田教授が生体実験で作り出してしまった、ホセとドロシーという異形の男たち*9が、何か恐ろしくツボでした。えっとねーホセが「キャバレー」のボビーみたいな感じの…耽美ダリヒゲ男でねぇ、眼帯しててねぇ、頭べっとり撫でつけててねぇ、で片手が人工筋肉で、ボディが人工内臓でほぼ全部露出してるの(笑)。内臓ほぼ全開なの! フルオープン! タマラン! そんでお耽美ルックスでべらんめぇ口調で巻き舌べろべろで超サディスティックなの(笑)。ほんとたまらなかったですよ…ドロシーなんか何がどうなっちゃってんのかサッパリな感じだったしな! ガスマスク的なマウスピース的なフェイスハガー的なモノを装着というか、顔にくっついてるのかもしれないですが、口元から垂れ下がったチューブっぽいものが大変有機的な質感で、うねうねぴくぴく動いてて…とってもきもちわるくて素敵でしたよ…ほんとたまらないわこういうの。そんなホセが血しぶき浴びてにやぁりと笑ったりするので、アングラグロ好きはぞびぞびしっぱなしでしたよ…。音楽がまたノイズミュージックというか、何かある種聞き慣れた感じで…ノイバウテン好きとしてはむしろ懐かしくほっとするようなノイズでな…。なーんだやっぱり好きだったんだこういうの、とちょっと安心しました(笑)。ノイバウテンは中学生から聞いてたもんな!
 で、見ながらずーっと、えっと飴屋さんはどこにいらっしゃるのかしら?と思っていたのですが。わたくしの飴屋さんイメージは、「マーキュロ」アートワークで嶋田久作の腹突き破って出てきてる麗しい美青年、だったので…どこかしら、と。見つけましたが、何か…確かに美貌の片鱗は伺えたのですが、…一回り大きくなられてる…?(笑)あとすんごい早口で変なイントネーションでわざと気持ち悪い感じの役作りで…とてもきもちわるかった(笑)。でも横顔のラインと絶壁頭は隠せませんでしたよ! やっぱり目が離せないな! あとホセ役の斉藤聡介さん、すごいです。表情というか…目の動きというか目玉の動きというか…タダモノじゃなさ過ぎる! 格好良すぎる!! 怪しすぎそして妖しすぎる!! 嶋田久作さんといい、やはり特異な方の周りには特異やら希有な方が集うものなんですね…こわいよぅ(笑)。
 で、当の飴屋法水氏ですが、M.M.M.後にアート系に移行されて、インスタレーションなんかされてた辺りまではぼんやり存じておったのですが、その後どうしたのかなーと思ったらいつの間にか珍獣ショップのオーナーさんになっていたり珍獣本出版されていたり、挙げ句フクロウと一緒にご隠居されたりしていたそうで…びっくりです。が、2007年からライブ活動や演劇活動も再開されているそうで! 平田オリザさんの戯曲を現役女子高生使って舞台化して演出したりなんかされてるそうで! 先日「パイパー」見に行った時に入ってたチラシで久しぶりにお名前見かけて、ええええええ!?と驚いてとりあえずチケット確保してみました(笑)。15年ぶりの演劇活動がどんな感じなのか、楽しみですよぅ。って、「前」をほぼ知らず、今日やっとその一部を見ることができただけなのですが! でも楽しみなのね!
 あと、法水氏関連でふらふらしていたら、ウィキに飴屋さんが2007年にライブ活動をされてたらしく、一緒にやられたのが大友良英さんで、大友さんと云えば3月に関西で放送されるNHKの未來さんの例のアレのサントラ手がけてらっしゃるそうで、…何か面白い方面から繋がるなぁ、と(笑)。大友さんははてなでブログも書いてらっしゃるんですねー。何かちょっと嬉しいや☆
 しかし一番びっくりしたのは、本屋でふらりと漫画コーナーに入ったら、グランギニョルの作品「ライチ光クラブ」がコミックス化されていて、えええどうして今!? 何かキてるんですか!? だったら映像も出して…と思ったこと、よりも、その漫画を描いているのがわたしの高校の時の美術の講師だってことでした(笑)。いや美術講師と兼業で漫画描いてるのは知ってたし、初期作品*10は好きで持ってますが、雑誌「ダ・ヴィンチ」で連載してた鈍器降臨も好きでしたが、何故グランギニョル〜!? 先生飴屋さんとつながってたんですか!? ちょ、どうして高校時代に知らなかったんだわたし!! 高校生の時にはすでにグランギニョルとかM.M.M.の知識はあったのにもったいない〜!! お話だけでも聞けたかもしれなかったのに!!
 まぁわたし音楽専攻で美術の授業は受けてなかったんですけどね。

ライチ☆光クラブ (f×COMICS) 

 「ライチ☆光クラブ」と、「ライチ☆光クラブ」出演中の飴屋さんを並べておきます。おおおおおうつくしいいい。

*1:基本うすらぼんやり生きているので、何かにつけてこの表現が当てはまってしまう

*2:と呼んでいいのかどうか

*3:1990年代初頭発売のビデオだから仕方ない

*4:最近だとブラッディマンデーの教祖様ね

*5:もしくは苦虫女の看守ね

*6:嶋田久作は登場人物の父親

*7:フロッピーディスクとか

*8:当時はそりゃあ最新テクノロジーだったんだろうよ! Win3.1以前だもんな! DOS時代だもんな!

*9:ドロシーも男だったと思う…セリフであったような

*10:ショートカッツとかPalePoliとか