ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

百万円と苦虫女 小説読了編

 初回映画鑑賞時に中島くんにめっためたのギッタギタにされ何かもうボロボロな気分になり打ちのめされ打ちひしがれたところに、「小説読んだらまた変わるよ」と教えて頂き、何かのついでに購入はしていたけれど五右衛門大阪などでバタバタして手を付けていなかった、こちら。百万円と苦虫女昨晩から今朝にかけて、途中で寝落ちしつつ、何とか2回目映画鑑賞に間に合わせて読了しました。
 すんごい、良かった。映画初回より、泣いた。というか、いかに自分が前回観た映画から何も読み取れていないのかが如実になって、恐ろしくもなりちょっと残念な気持ちにもなり(笑)。これ、未読の方がいらっしゃったら、読んだ方がいいと思いますよ…ってかなりイマサラなのであまり未読の方もいらっしゃらない気もしますが! 完全に出遅れてる!
 登場人物それぞれの心情がとても丁寧に描かれていて、映画でも聞いたセリフや、その言葉の云い方、口にしている時の表情が、「その表情でその言葉を発するに至るまで」の経緯や思考回路がすごく良くわかる。映画では描かれなかった春夫のバックボーンや、中島のそれまでのイロイロ、そういうのがあった上でのあの言葉、というのが、どれもすんなりと染み込んできて、あんっっっなに納得いけなかった中島と鈴子のアレやソレが、…ああ、それじゃ…うん。そうだよね…と。どっちにもきちんと乗っかって読めました。うん、あの二人は仕方ないよな…バカだしダメだけど、でも仕方ないよな…。
 小説で一番良かったのは、春夫が鈴子に渡した餞別の桃のシーン。もう、ぼたぼた泣いた…春夫がこんなに優しい気持ちでいたなんて、すみません初回映画からはちょっと読めませんでした…むしろピエールさんのちょいキモな佇まい*1に、…この人本当はどんな人なのよ…??とかなり最後まで懐疑的だった(笑)。あとはやっぱり、拓也の心情が。映画での描かれ方から、そこまでのディテイルを読み取るのはさすがに難しいです…でも、小説にはその辺もきっちり書かれていて、ただでさえ健気というか、そんなにがんばることないよ!って思ってしまう拓也が、余計に…うん。手紙、泣けたわ…。
 文章もクセが無くて、情景が映画の場面での有無に関係なく、同じあのトーンの画面で脳裏に浮かぶような、堅くなくてさらさら読める文章でした。分厚いからもっと字が大きいのかと思ったら、けっこうしっかり量もあって、読み応えもあった。鈴子の、中島の、拓也の、春夫の、心の動きがそれぞれ、手に取るようにわかるから、みんなそれぞれ愛おしくなる、そんな小説版「百万円と苦虫女」でした。
 個人的には、前情報ゼロで映画→小説→もう一度映画、というコースをお薦めします。わたくしそのコースで、とても良かったと思っています。初回は是非、何も知らない状態で、中島くんにブン回されて頂きたい(笑)。
 …って、もうすぐ渋谷の公開も終わる頃に何を云ってるんだって話ですが。
 それにしても、鈴子の思考経路がとても何というか自分と近い印象というか、うわぁわかる、けどそれじゃダメなんだよねー、でもダメなこともわかってるけどそうなっちゃうんだよねー!という…まぁようするにダメなんじゃんってことなんですが、ダメなところで大変近しい印象を受けてしまいました。主に恋愛面で。あー鈴子はいいなー中島くんが現れてー(笑)。
 「誰も自分のことを知らない土地で生活したい」というのもすごく良くわかる。実際、現在の状況はかなりそれに近い感じを保っているし、それがちょうどいい。何かね、近所に顔見知りのおじさんとか、お隣のおばちゃんとか、誰々ちゃんのお母さんとか、元同級生とか、がいて、仕事帰りに歩いてると声かけられて、立ち話して、それじゃ失礼しまーすと頭下げて、そういうのが…苦手というか。微かに煩わしく感じてしまうのです。幸いなことに今、実家が近いにもかかわらず、そういうのがほとんどなくて、何というか、ホームなのにちょうどいいアウェー感というか(笑)。これぐらいがちょうどいいので、積極的に誰かと親しくなりたいとは思わないのです。スーパーで買い物中に「あら〜」とか声かけられるのが面倒くさいんですよ。でも、鈴子と私が決定的に違うのは、鈴子は全てに於いてアウェーでいい、自分はひとりでいい、てスタンスだけど、私は「ホームは別にあるからここはアウェーでいい」というスタンスで。完全にアウェーで在ることができるほど、強くもないもんで。ホームでいたい場所はちゃんとホームとして確保しておきつつの、アウェーライフを楽しむ(?)、という…でもそういう人多いんじゃないかなー。みんながみんな、地元密着型生活を送っているわけでもないですよね、特に独身で一人暮らしで会社勤めだったらなおさら、さ。どうかな。
 …と愚にも付かないことを思ったので思うまま垂らしておいてみる。

*1:…すみません