ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「IZO」@青山劇場

 で、そんな「新・雨月物語」の開演前に席に着いてから、あーIZOも見たかったんだよねー、明日までだよねー、なんて話をしておりまして。IZOの当日券はくじ引き方式*1で早く並ばなくても平等にチャンスは訪れる、なんてことを云っているうちに、…ダメ元でコレ終わったら行ってみる?的なノリに。少なくとも明日の東京楽よりはマシだろう、というのと、あと三軒茶屋と表参道が近いのも後押しして、いやぁ雨月凄かったねかっこよかったねあそこのアレはどの時間軸??などと云いながら、当日券に並んでみました。くじ引き開始の15分前くらいに青山劇場に着いて、でも時間は関係ないからわりとギリギリに来る人が多かったようです。列の結構前の方になりました。後ろにはかなりの人数が並んでいたかと。
 くじ引きには非常に運がない自覚と自信があるので、まぁ30番くらいが当たったらいいなーそもそも立ち見狙いだし、なんて云いつつも、一応大地*2に倣って「この瞬間俺の右手は神の右手だ」を唱え、引いた数字が4番。オオーゥス、まさかの1桁! もう今年の運はこれで使い果たした! 無事に当日券をゲットして(補助席になりますが、という窓口のお姉さんに半ば無理矢理立ち見券を売って貰って)、IZOソワレ観劇してきました。うわーハシゴなんて映画だってやったことないのにー。同じ芝居をマチソワ、はしょっちゅうやるけど、お芝居2本立ては初めてです。しかも雨月がかーなーり良かったので、印象が薄くなるのがもったいない。もったいないけど、今日じゃなかったらIZOはもう見られない。だったら見るさ!ということです。
 立ち見はメタマクでもやったので、まぁ大丈夫でしょうとポジションに着いて、オペラグラスも持ってたし、快適に観劇できました。やっぱりジューダス・プリーストはテンション上がるねぇ! 比べるものではないとは思いますが、どうしても…さっき見た雨月は、初めて見る演出家さんでもあって、全く予想がつかない・何がどうなるのかわからない、そういう意味でも目が離せなくてグイグイ引き込まれたけど、新感線はある程度の予測がもうつくので、ある意味安心して見られてしまいました。あ、もちろんストーリーや展開が、ってことではなくって、何だろう、観る側の心構えというか心づもりというか、がね。テンションの置き方が測れる感じでね。安心なのです。
 幕末の知識もざっくりとしかないので、「燃えよ剣」と「竜馬がゆく」を読んだくらいなので、非常におぼつかない感じではありましたが、まぁ何とか大丈夫。こちらはまた、大がかりなセットと派手な演出で、これはこれで新感線の醍醐味!という感じで大変楽しめました。が、今回かなり映像を多用していて、ちょっと…ええっそこアニメでやっちゃうの!?という所がいくつか…いや、場面転換の数が半端じゃなかったので仕方ないとは思いますが。盆を使った路地での殺陣とかは、さすが計算し尽くされた動きで格好良かったです。血しぶき噴出は嫌いじゃない演出ですが、見慣れると、殺陣の動きや位置移動で、あああそこにノズルがあるんだなーというのがわかってしまう(笑)。いや、でもすごい好きなんですけど血糊とか血しぶき飛ぶのとかは。舞台演出の醍醐味ですから!
 主演の森田剛くんは、正直…あんまりというか、ほとんどというか、期待してなかったのです。大変申し訳ないのですが。だからFC先行でチケット取れなくても、まぁいっかーで流しちゃってた。でもちょっと小耳に挟む評判がいいから、へー森田くんはともかく話は観てみたいな、と、その程度の認識及び興味で観たのです。
 が。これが。すごい、良かったですよ! 良かったんですよ! 武知先生の「犬」としていいように飼い慣らされて、使い捨てられた、人斬りには長けたけど頭使って考えることは苦手な、頭悪いけどその分純粋な、真っ直ぐな、純粋で真っ直ぐだからこそ良いように使われてしまったんだけど、そんな以蔵の哀しさを体現してた。小さくて、華奢で、痩せっぽちで、ぼろぼろで、口尖らせたみたいにして土佐弁を繰る森田くんの存在感が、もう哀れで。「哀れ」な存在感を出せている、その時点で以蔵としては文句ないと思います。しっかしここまで床に頭こすりつけてる主役の舞台も珍しかろうな…。戸田恵梨香ちゃんは、あんまり印象というほどのものもなかったのですが、舞台で観たら可憐で強い、とても可愛らしいおみっちゃんで。初舞台とは思えない、堂々としたヒロインっぷりでした。可愛かった切なかった! 田辺誠一さんはもう、期待大というかむしろ目当てくらいの勢いでしたが、いやぁ…ナイス半平太先生でしたね! 極悪非道には届かない人間味が、惜しいというか残念というか、いや極悪に描く必要ないんですけど…。以蔵の飼い慣らしっぷりが絶妙なようで今一歩詰めが甘い感じが、どうにももどかしかったです(笑)。武知先生が実際どんな人だったのか知らないで云ってますが。個人的な趣味で云うと、もう一段の酷薄さ・狡猾さが以蔵に対して見たかったなぁ、なんて。その点、西岡徳馬さんの容堂様は流石でございました。イケテツ先生の竜馬さんはもう、たまらんぜよ(笑)。重暗〜い中に一服の清涼剤にしてはちょっとクドいけど、でもすっごく良かった。シリアスなシーンではカッコイイし、流石です。あと木場勝己さん、おみっちゃんが働く料理屋の旦那さん、も素敵だったなぁ。
 劇団員さんは、粟根さんの勝先生もイイ味でした。人殺しの目とか、顎とか、眼鏡キラーンとかは封印されてましたが。個人的に贔屓なさとみちゃんがかなり出番多くてキュートで嬉しかったなぁ。えっと…恵梨香ちゃんとずいぶん年違うハズなんだけど…(笑)同じ勢いで娘っ子でしたよ! メタルくんはあんまり見つけられなかったなぁ。いっそんさん、いきなり大役でびっくりでした。あと河野さんも! 川原さんはそんな大役いっそんさんに…な役でこれもいきなりびっくりです。あと2幕の新撰組は、あれ沖田です…よね? スウィートボイスな沖田でしたわ。右近さんは、いつどこでお見かけしても右近さんで嬉しくなります。エマさんはセクシーだったなぁ、「三千世界の鴉を殺し、ぬしと朝寝がしてみたい」もかっこよかった〜。
 
 大して語れませんが、ネタバレになるかもしれないので一応畳みます。
 
 
★★以下ネタバレあり★★
 
 
 えっとかなりどうでもいいんですが、右近さんのおじゃる様*3…、姉小路公知だっけ、が斬られるシーン、で、スクリーンに背景が映されてるんですが、何故かそのスクリーンに一瞬、「ご来場あり(がとう)」みたいな字幕が映って、何かと思った(笑)。シリアスなシーンだったんだけど、斬られてるのが右近さんだし、もしかしたら何かこう、「ご来場ありがとうございました!byきんとも★」みたいな何かが出ちゃうのかと一瞬(笑)。そんなこと全くなく、大変シリアスなムードのまま公知様は斬られてしまいましたが。いやびっくりした。右近さんが斬られそうになりながら「どういうことじゃ!?」みたいなことを仰ってましたが、ああまったくどういうことだ!?と思いました。あれ、カテコ時にも出てこなかったし、きっと明日の東京楽カテコ用の字幕だよなー。
 とそんなことはともかく。
 とにかく、以蔵のダメっぷり、残念っぷりが哀れで、何かするたびにそれが全て裏目に出る運のなさと浅はかさ、やればやるほど自滅していくしかない後半の転落展開が、本当にもう、哀れとしか云いようがなく。もうさっさと侍なんかやめちゃっておみっちゃんと一緒になればよかったのになぁバカだなぁ。演じてる森田くんが本当に痩せた犬っころみたいで、余計に哀れでした。可哀想。冒頭の「なんちゅうない」というセリフを、ラストにもう一度聞いた時に、たまらない気持ちになりましたよ…。もともと何も持ってなかった以蔵だけど、武知に捨てられ、おみっちゃんを亡くし、友も夢も未来もなく、剣も奪われ、何にも、ほんとに何もかも、失ったんだな、と。みっちゃんと酌み交わした死の三三九度、みっちゃんが「ただのままごと」って云うのも切ない。…何かもう、せつねー!!ばかりでした…ツラい話だ。
 「天誅」の「天」とは?から「天は回る」になるの、星がぐるぐる回ってる辺りではイマイチこう、筋はわかるけど心に刺さってまでは来ないなー、なんてわりと冷静に見てたのですが、ラストの「天を見ずに、地に足付けて山を見ていれば良かった、山は動かないから」というくだりで、流石にちょっと涙腺緩みました。武知先生ばかり追いかけてないで、みっちゃんに気づけばよかったのにねぇ…ほんと、バカだよなぁ哀れだよなぁ。でも、そうならざるを得なかった時代であり、人間であり、波であり、だったんだろうなぁ。まんさくの黄色い花びらが舞い散る中、「赤い血も黒い土も、この先の世が明るい光で満たされるよう、黄色い花びらで覆い尽くしてくれ」と独白する以蔵にじんわり来てしまった。よもやじやにぃずさんに泣かされようとは…!
 ほんでカテコなんですが、どうにも最近カテコで涙腺緩むことが多くて…良かったね、良くやった!ていうのとか、芝居とはいえこんなつらい思いを毎日、1日2回も、くり返さなくちゃならないなんて、役者って…!とか*4、何か色々混ざっちゃって。またずらりと勢揃いするとさー森田くんのちっこくてがりがりで可哀想な感じが際立っちゃって…ほんと哀れな存在感だ…。
 と、無理矢理2本立て観劇の1日だったのですが、2本どっちがどっちも、1本ずつじっくり語りたい、思い返したい、ほじくりたいひっくり返したい!!な感じの重量感で、非常にさっくりとしか語れないのがもったいない、のでした。でも今日1日で見ないと見られなかった2本だし! 後悔はしてないわ!!

*1:並んだ順に番号が書いてあるくじを引いて、その番号順にチケットが買える

*2:@WB

*3:すいません名前が

*4:これはもう、婚礼とかですっごく思ったわ