ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「私はだれでしょう」@紀伊国屋サザンホール(2/24)

 北村まみれです。が昨日の今日で見る生有起哉さんはまた…キラキラと目を輝かせぐねぐねと身体をぐねらせてステキでした…。
 戦後間もないNHKラジオ放送局。戦中戦後の混乱で生き別れた人を探す「尋ね人」を放送する4人の局員と、特攻順番待ち中に8月15日を迎えた労働組合員、新たにNHK担当となった日米の国籍を持つ日系2世の米軍人。そこへ、自分が誰であるかわからなくなった一人の引き揚げ軍人が「私はだれでしょう…?」と問いかける。
「私」を探す彼の出現によって、それぞれがそれぞれのアイデンティティを見つめ直し、探し直す。そんな物語を、時にしんみりさせながら、それでもポップでキュートなピアノと歌に乗っけて、つらくて大変なことだらけだけど明るく復興を目指した戦後の人々を、古臭くなく、説教臭くもなく、とても自然に魅せてくれました。「私はだれなのか」ではなく、「私が誰でもかまわない、大切なのはだれとして生きるか」というメッセージは時代に関係なく普遍的に、誰もが抱えて生きるべき命題なのだなと。ともすれば重くなってしまうテーマを、本当にふんわりと、じんわりと、染み渡らせてくれるステキなお芝居。もちろん、私は知らない時代だけど、昔の話とも意識せず、違和感も覚えず、きっちりと入り込ませてくれました。興奮とか熱狂とかエンタテインメントとか、とは対極にあるけど、じんわりイイなぁ。そして敗戦国という、かつてこの国が於かれていた状況*1の不条理さ、悔しさにちょっと胸が詰まった。それが敗戦国というものなのですか。
 で、我らがぐねぐね氏。まずもうそのふぁっそんがタマラナイ! マフラーではなく襟巻きとしか呼び様のない素敵なモノを首に巻いて、ズボンの裾はゴム長にinして、ボロは着てても格好良く…面白く。ハンチングとは決して呼べない鳥打帽もまたお似合いで。もう2週間風呂入ってねぇ的な手ぬぐいもまた奇行に磨きをかけ。アレだねタオル類持たせたら日本一面白いね。笑うと仔犬のようになってしまう可愛らしいぐねぐね…。また酔っぱらってぐでぐでしてました…。知らぬ間に片手に握らされているチョコレートもまた良し。寝言もチャーミング。そして何云ってるのか良くわからない(笑)。もう、前半は北村さんが一言発するたびに客席が笑いに包まれましたよ…。私の斜め後ろくらいに年配の男性*2がいらっしゃったようで、いや見たわけではなく声だけなのですが、ユッキが何かするたびにとても良く通る声で笑ってらして、何か…嬉しくなりました(笑)。ねぇ可愛いですよねぇ面白いですよねぇあの人!と心中勝手に同調。
 しかし…凄い力を持つ役者さんだと改めて思いました。鴻上さんは「放し飼い系」と評されてましたが、うん、手榴弾みたいだよ北村さん。ピン抜いて舞台に転がしておけば数秒で大爆発。使い方によってはものすごく効果的。というか、今回のこのお芝居では、そのパイナップル的特色を最大限に効果的かつ魅力的に使ってくれたなぁと。ほんっと、この可愛らしくて熱い、真っ直ぐすぎてちょっと足りない労組団体員が、心底愛しいですよ。こんな人が集金に来るなら喜んで組合費払う。いやむしろ滞納に滞納を重ねて「払うまで毎日来ますよ」と云わせるか。でもカンパはする(笑)。
 そんな彼だからこそ、最後に残した「…さようなら」の一言が重く、ハガキの言葉がずしりとお腹の底に溜まってくる。切なくなってくる。いや、わたくしもっと最悪な流れを想定していたのですが…そうじゃなくてそれはよかったな…と*3
 浅野さんは凛として美しく、出来る女のプロトタイプ…かと思いきや、覗かせる弱い所がまた魅力的でした。ああ、だから高梨くんが元特攻だって名乗った時にすごく…優しく悲しい感じがしたんだな。梅沢昌代さん、すごくキュート。もんぺ似合う! しんみりしがちな場面でも、明るい救いになっていました。セリフ回しのわざと時代がかった感じも上手いなぁ。前田亜季ちゃん、わぁオトナになって! 何か顔が昔と違うような…いや昔って小学生くらいの頃ですが。そりゃ顔も変わるわ。滑舌良くて爽やかで可愛らしくて清楚ででもチャキチャキで、歌も歌えて、とても良かった。こういうちょっと昔の時代設定のものに、若い子が入ると、そこだけ現代っぽくなっちゃってちょっと違和感…なんてことがままありますが(時代劇とかさ)、全然全くありませんでした。川平さんを差し置いてアメリカ軍将校役の佐々木さん、これまた背が高くて顔が小さくて軍服が似合うったらない! ピシリとした雰囲気が素敵でした。こんな村長さんそりゃモテモテだろうよ…。で、そんな佐々木さんとぐねぐね北村さんが、並んで微かに身体を揺らしながらハミングなんかしてらして…背格好はそんなに違わない、どちらも長身でバランスいいスタイルのはずなのに、どうしてこう…違うんだろうかと。思わずにはいられなかった(笑)。えっ役とか衣装とかの所為だけじゃないですよね? 川平さんは相変わらずというか川平さんでした。山田太郎って顔してないよ! タップも歌もノリも相変わらずで、安心しつつニッコリ。ステーキの歌の時に川平さんが「ナイフとフォーク」って云ったので何か違う方に意識が飛んだりしました。
 そう、歌なんです。歌うし可愛く踊るんですみんな。もうねー踊る北村さんの顔が可愛くてかわいくて。ラジオの歌の時の、前屈みに上体倒してピンと伸ばした両手を身体の後ろに突きだしてぱたぱたさせるのとか、「東から西まで」って歌いながらねとーんとテーブル撫でるのとか、「みみ」で肩をカクッとさせるのとか…ゴム長穿いてそんなにカワイイことされても困りますよ…。ステーキが大好きの時のやたら高い腿上げコサックダンス風とか、慈英さんのタップを真似してじたばたゴム長タップ(できてない)(でも嬉しそう)とかさーもう! 何なのその振りまくチャームは一体! 歌い出した時には一瞬、リンダリンダのアレを思い出しました。が転がらなくて良かった(笑)。
 音楽は全編、ピアノ生演奏のみでしたが、これがまたすごく良い〜贅沢だなぁ何か。本当に、こぢんまり、でもほんわりほっこりキュートな、愛すべき作品でした。小品、と云いたくなるのですが休憩挟んで3時間半くらい実はあるので決して小品じゃないんだな。でも、派手さが一切ないのに、長さを感じさせない、3時間越えて「こぢんまり」もないんじゃないかと思いますがやっぱりこぢんまり、てことはまとまりがすごく良くて、良くできてるんだろうな。さすが先生、筆は遅いが出てくるものはやっぱり、流石としか。
 最後、浅野さんの隣にぴとっと張り付いて座って、満面の笑みで浅野さんの手を握ろうとしてペチンとされてるのがたまらなく可愛らしい北村さんでした。あんな笑みずるい。邪気なさそうじゃないか! その実は知らないけどさ!!
 カーテンコールは一度であっさりでした。そうかこまつ座のお客さんは粘ったりしないんですね(笑)。そういうの求めてないんだ…大人だなぁ…*4 *5

*1:果たして今それは解消されているのか

*2:いや客席半数以上がご年配でしたが

*3:高梨実はGHQのスパイで馬場・川北を監視・密告、みたいな…一気に悪人に…

*4:軽く反省

*5:でもやっぱり見たいというかお楽しみの一つなんですよ…