ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

オレステス ソワレ

 初シアターコクーン*1で、初ニナガワ舞台、初ギリシャ劇、を観てきました。最近初めてのことが多くて新鮮だなぁ! 基本的には「北村有起哉を観る」目的で、かなり肩の力を抜いての参戦でした。が…始まってみたらガッチガチに力入れて観てた(笑)。でも、緊張の度合いというかベクトルがいつも*2とは違うので、お芝居自体はとてもリラックスして楽しめました。
 とにかくギリシャ神話なので、とりあえず人名がマズい。覚えられない。地名は端から諦めた。あと、誰と誰が誰と誰の子で、誰と誰が婚姻関係で誰と誰は兄弟で、そういう相関図もなかなかにして複雑。しかもお話のスタート地点の時点で、それらの背景がかなり前提として複雑化しちゃってる。いきなり観たら置いていかれる、とのことだったので、事前に一通りお勉強(笑)して挑みました*3。これが良かった! すんなりお芝居が頭に入ってきた! これなかったら多分、冒頭で置いていかれてそのまま、ん? えっ? あれっ??で最後まで行っていたんじゃないかと…すいません脳味噌がちょっとしかないんです…。
 ギリシャ劇の特殊な様式も面白かったです。多分、普通のお芝居を観る気分で行ったら、「…何コレ」になるんだろうけど、その辺のお約束を踏襲した上で観れば大丈夫。セリフが説明っぽいとか、オチが一体…とか、そういうのも、作られたのが何しろ紀元前、聖書より前に書かれたものだから!「神」と語られる存在を、所謂宗教的なものとして捉えてしまうと、大混乱に成りかねませんが、ギリシャ神話の神様たちってほら、気に入った人間の美少年をかっさらって給仕させる為に天上に召し抱えちゃったり、お姉ちゃん追っかけてばっかりだったり、何というか大変…人間くさいというか…神性とはほど遠い…かなり下世話な…ねぇ(笑)。人間と神の境も曖昧というか、わりと自由に行き来しちゃうというか、気に入ったからとか哀れだからとかで人間を神に加えたり、神が姿変えて人間の元に降りたり、でも神と人間の間に生まれた子は神じゃなかったり、…その辺の、何というか「アッバウトなノリ」を掴んでいれば、安心して観られるんじゃないでしょうか。あーそういうもんそういうもん、的に。
 舞台構成も同じことで、あーそういうもんそういうもん、です。コロスとか、普通に観たら「何なの一体? つか誰なの一体?」だけど、お約束をわかっていれば問題ありません。アレは情景描写でありト書きであり背景であり状況説明でありモブであり観客の心中ツッコミ代弁でありナレーションである、と。何せ紀元前、シェイクスピアの2000年以上前です。表現方法が原始的でも、セリフが説明的でも、仕方ないですよねー。たぶんこれより前は詩の朗読ですよ、「役」という概念が成立しただけでもすごい画期的と思います。
 うん、また何の話だかわからなくなった。
 で、そんな中で観た蜷川ギリシャ神話。これが、すんごく面白かったです! 休憩なしの2時間ちょっと、ひたすらもの凄い引力で舞台に引きつけられた。目が離せない、離れない、気が緩まない。それが、役者の力量なのか、演出の巧みさなのか、ギリシャ神話の面白さなのか、は見極められなかったけど(合わせ技かも知れない)、とにかく…ずーっとギリギリしながら観ていました。ぐわっと心臓掴まれて持って行かれるので、ギリギリして踏ん張らないと負けてしまうような感じ。でも、それが全然苦痛じゃなくて、瞬きする間も惜しいくらいに面白いのです。…面白いんです。確かに目の前で繰り広げられているのは悲劇で、姉弟も親友も嘆き悲しみ、文字通りのたうち回って転がってるのに…私すんごいキラキラした顔で観てたよ多分…。スペクタクルでドラマチックなんだもん! かっこいいんだもん!!
 そろそろネタバレに触れそうなので一応畳んでおきます。

 
 この先ネタバレ有ります。
 
 

  • 開始。この瞬間の打楽器で、ぶわっと鳥肌立ちました。音楽がほぼパーカッション生演奏のみ(少しだけ音楽…というか音色というかもありますが)なのが、荒々しくてプリミティブなのに洗練されてて本当にかっこよかった!
  • そして雨。本当に降ってる! 最前列のお客さんは膝にビニールシートを掛けていました。雨音でセリフが聞き取りにくい、という話を小耳に挟んでいたので、ちょっと心配だったのですが、席*4の所為かほとんどストレスも感じませんでした。豪雨に打たれて這いずり回る悲劇の姉弟が…痛ましくもあり美しくもあり。濡れて張り付く髪の毛とか…中嶋朋子さん本当に綺麗だった!
  • 役者さんはコロスの皆さんも含めて、雨に打たれてびしょ濡れになりながらのお芝居でした。席が通路近くだったので、コロスの人たちが通路に出てきた時とか、ちょっと冷たかった(笑)。前方席の人が、コロスの人が頭上に傘を振りかざした時に、かなり盛大に跳ねがかかっていたのが見えました。
  • 中嶋朋子さんasエレクトラ。すごい、細くて小柄で華奢で折れそうなんだけど、その芯は劇中の誰よりも強くて堅くてしなやか。ちょっと低めの、ドスの利いた声もステキでした。また滑舌というか発声というか、豪雨に負けずに一言一句を伝えてくるんだよなー。すごいなー。舞台上に出てくると、自然に目が吸い寄せられる感じでした。
  • 藤原竜也さんasオレステス。正直、今日観るまでは、全然…興味も引かれないし、ほんと何とも思っていなかったんです。別に嫌いじゃないけど、かといって何か琴線に触れるモノもなく。だったんですが。…すごかった。蜷川さんが何度も使いたがるのも納得。ごめんなさい知りませんでした。あんだけまくし立てる様なセリフを、感情込めながら、雨音の中、這いずり転げ回りつつ、きちんと言葉の意味まで伝えてくる。ことばをつたえる、って基本的なことだけど、でもそれがどんどん困難になっていく状況の中で、底力を見せつけられた感じがしました。うん、凄い。
  • ほとんど裸に近い格好で、寝台から何度も転げ落ち、濡れた床を這い、転がり、転倒し、滑り、膝を突く。あちこちにある赤い痕や傷が痛々しい。膝サポーターあっても痛いだろうなぁ!と、藤原くんががくりと膝を折るたびに「いたっ!」と思ってました。膝…真っ赤だろうなぁ…。
  • ヘレネ様。これはもう様付けるしかない(笑)。出てきた瞬間から、そのあまりのヘレネ様っぷりに腹筋が痛む痛む! おみ足美しい〜衣装もよっくおわかりで! キャラわかってるよ! 杉本彩様かよ!とつっこみたくなる素晴らしさでした。大好きだ(笑)。
  • メネラオスオレステスの叔父。すいません名前口に出して云えません(笑)。覚えられない! しかし、登場シーンから至近距離を歩かれて、ガチャガチャ云う鎧の金属音に何かもう、得も言われぬ高揚感を覚えました…(笑)。かあああっっっこいいいいい!(主に衣装が)(人柄はダメ男)
  • 登場シーンから無言で付き従っていた、甲冑姿の従者もかっこよかったです! 舞台下に片膝突いて控えて、そのままずーーーーっと控えっ放しで、ふいに思い出すとまだ通路に片膝突いてて…隣に座られたら大変だな*5、と思いました。あんまり長い間控えてたから、途中でうっかりその存在を忘れてて、突然動いた時にすんごい驚いた。わっまだいたんだ!って(笑)。
  • 何となく衣装を見てしまうのですが、メネラオスとコロスの方々は、足下がスケッチャーズな感じでした。コロスさんたち、ごっつい厚底サンダルはいてたよ! 足下危ないからね…気をつけて下さい…。
  • テュンダレオス。オレステスの祖父。最後までこの人も名前覚えられなかったな(笑)。聞けばあああの人、ってわかるんだけど! これまた圧倒的な存在感で、また至近距離通過で、お祖父様のマントには木〜象牙〜貝殻系?の飾りがたくさん付いていて、動く度にキャラキャラといい音が鳴っていました。これがね、メネラオスの鎧の金属音と何というか、対照的というか…かっこよかったです。
  • 音といえばコロスの人たちが持っているビニール傘、鈴が付いてるんですね。標題音楽的な感じなのかなー。主要メンバーには音ないけど。あっピラティス…じゃなくてピュラデス?にはカモメがあったか。
  • テュンダレオスの足下は厚底ブーツっぽかった(笑)。
  • 満を持しての登場、北村さんasぴら…じゃないピュラデス。ダメだどうしてもピラティスとかティラミスになってしまう…。すんごいがんばらないとピュラデスって云えないよ!
  • 鳴き交うカモメの声を背にして、風の様に、突然、後方から…駆け抜けていきました…。
  • いやぁ…かああああっっっこいいいいいいい!!!! 正直な所、北村さんご本人を見て思うのはいつも「おもしろいなぁ!」なんですが…どうしてこの人、役を纏うと…こうカッコイイのでしょうか。ひゃああああ!!!ってなった!
  • 肩に付くくらいの髪も、ヒゲも、ひらひら長い衣装も、青マフラーも、かっこいい! 背が高いから、ずるずる長い衣装がよく映えます。半裸の藤原くんとの対比がまた。
  • しっかし噂には聞いていたけど近いなぁ! いろいろ近いなぁ! オレステスとぴらて…じゃないピュラデスも近いけどエレクトラオレステスも近すぎるよ! 姉弟でそれはないよ度が、アネキの比じゃない。
  • がピュラデスとオレステスも負けてはいません(笑)。抱きしめる頬は撫でる手は握り合うおでこくっつく鼻はすり寄せる髪は愛撫、すんげーなー親友…いや、すんげーなーギリシャというか。さすがはギリシャというか。
  • いやさすがは北村さん、かもしれないけど。
  • でもかっこいいんですピュラデス*6。弱ったオレステスの世話をかいがいしく焼く姿に、わたしの世話もしてくれーと思いました。
  • オレステスエレクトラの命を救って欲しいと神に嘆願するシーン、床に身を投げ出しての北村さんの、絞り出す様な声が…たまらなく好きです。もちろん引きの吸気音も!
  • 姉弟の、えっそれってすでに濡れ場じゃない?的シーン後に、エレクトラの服をそっと直すピュラデス…というか北村さんがとてもステキでした。肩が落ちちゃうのを、すごく優しく直してあげるの。
  • …でも、自分の弟とこおおおんなに仲がいい男と結婚するのはちょっとやだなぁ、と現代日本人の姉は思いました。古代ギリシャ人のことはよくわかりませんが。
  • あたしと弟とどっちを選ぶの!?みたいなことにはならないんでしょうかね? 気になって仕方ない(笑)。
  • …ああでも、旦那にしても「俺と弟とどっち取るんだよ!?」になりかねないか…っていうかあんたらどっちもオレステスのこと好き過ぎだよ(笑)。
  • ままりんさんも云ってたけど、確かにヘレネ暗殺〜立てこもりシーンは立ち回りが見たかったです…わぁんプリュギア人の報告聞いてるだけでも何かもうかっこよさそうなのにぃ! 長髪なびかせ裾ひるがえし次々とお付きの者達を閉じこめてから、じりじりとヘレネを追いつめるピュラデス…ああカッコイイじゃない〜! 復讐に目をぎらつかせて、薄い笑みまで浮かべて命乞いするヘレネに躙り寄るオレステス、なんてのも見たいよ!
  • しかしその辺はご報告でしか聞けないのです…しかも要領得ないし。そりゃーコロスもつっこむさ!
  • 城の高窓がバーン!と開いて、立てこもった3人が姿を現すところもかっこよかった…松明片手にメネラオスを睥睨するピュラデス、ステキでした。
  • そしてクライマックス! さぁどうするこの事態!!ってところで…えええええ(笑)。…いや、このカタルシス…いっそ心地よいですよ(笑)。
  • その強引なオチの付け方も様式美の一環です。…や、何か核ボタン的な切り札でいいんじゃないかしら! 色々あったけどポチッと押したら全ておしまい!みたいな。
  • 実はほんのちょっと、この舞台でも機械仕掛けの神が登場しないかなーと期待していたのです。文字通りこう、何か…素敵マスィーン仕掛けの舞台装置とかが。…うん、声のみのご出演だったんだけどね…。
  • しかしアポロン。何でオレステスに母親殺しを神託したのかもわからなければ、いきなり出てきて勝手に「はいそことそこ結婚。そことそこも結婚。あんたは天上で神格化。あんたはそこの王ね、じゃ後ヨロシク☆」って…さすが神のやることは違うな! つか全ての元凶はあんたじゃないか?(笑)
  • 人間とは神の身勝手に、嵐の中の木の葉のように翻弄されるしかない存在なのです。…ということでしょうか。あー…まぁ確かになぁ。
  • でも個人的にこの無理矢理な終わらせ方は嫌いじゃないです。…いや、知らなくて、何らかのこう、復讐の成就とか、素敵な解決案で八方丸く収まるめでたしめでたしエンディングとか、を期待していたら、「…えええええ!?!?」ってなってたと思うけど。
  • 最後のビラと音は、私は…いらないとおもいました…。うん、さるるラストの字幕くらい必要ないと思いました…。そこまでの普遍的なメッセージがこの話にこめられてるとも思わないしなぁ…。あ、絵的には面白かったです! あれは後方、もしくは舞台側から見てみたいな。っていうかどっから降ってきてたんだろう…気にする余裕がなかった…。
  • カーテンコール。4回くらいだったかな。特に何かお遊びがあるわけでもないのですが、ヘレネ様の手を引いて現れた北村さん、エスコートの手をどんどん高く上げて遊んでた(笑)。
  • 藤原くんと中嶋さんの笑顔がやっと見られて、嬉しかったです。

 えーざらっとそんなところで。面白かったです! 開演前のロビーで蜷川さんとお話してる松たか子さんを見かけ、劇場内に入ろうとしたら前を歩いていたのが嵐のマツジュンさんでした。松さん…無造作な格好ででもかぁんわいかった!! マツジュンさんは…帽子で半分以上顔が隠れていてもその美しさは隠せていなかった…。あと、もう一人、小柄な、帽子を被った女性が、蜷川さんと親しげにお話されていたのですが、誰だかわからなかった…。え、あれ大竹しのぶさんだったんですか? ほんとに?
 観劇前はマチネ終了組の方々とお茶して、終了後はままりんさんと夜お茶したり渋谷の町をうろついて、どっちもとても楽しかったです! こうやって興味の幅が広がって、今まで知らなかったものが見られたり、会うことのなかった新しいイイモノに出会えたり、するのって…凄く素敵なことだなぁと思うのでした。財布は凄く素敵なことになってるけどね!!

*1:オーチャードしか行ったことなかった

*2:っていうか…

*3:mamarinさん大感謝です!

*4:6列目センター

*5:客が

*6:おっ覚えてきた!