ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

La La La Human Steps「AMERIA」in教育テレビ

 去る8月20日、大阪の空に虹が架かったお誕生日の夜、教育テレビ「芸術劇場」でバレエの特集が放送されておりました。よろよろと西から帰ってきたばかりの私はそんなこと知るよしもなくばたんきゅーだったのですが、その後うちのママンが云いました。
「あなたの好きなラララ何とかのアメリとかアメリアとかいうの、やってたわよ」
 …その時のわたくしの嘆きようと云ったら! 本気でちょっぴり涙出ましたよ!
 ラララ・ヒューマン・ステップスはカナダのコンテンポラリーダンスカンパニーで、今のところ私の中ではベジャールバレエと双璧を成すお気に入りカンパニーなのです。いやベジャールと並べるのはオカシイかも知れませんが。私が好き、というただその一点で並べてるので。とにかく動きがカッコイイのと、使う曲がMy Bloody Valentineだったりノイバウテンだったりニック・ケイヴ&バッドシーズだったりでいちいちツボなのと、ボウイとコラボしたりなのと、何というか私個人的に至れり尽くせりなわけです。
 で、アメリア。2004年に日本でも上演されて、前作「Salt」に続いて*1さいたま芸術劇場に足を運んで観てきたのですが、それが映像作品化されたものが今回、芸術劇場で放送されたようです。DVDになってるのも知らなかったよ…。
Amelia: La La La Human Steps [DVD] [Import]
 観たかった観たかったんだよもう一回あの超高速ポアントを! 使ってる曲がベルベット・アンダーグラウンドの歌詞に新たに曲を付けた超カッコイイ曲なんだよ! どうしてすぐさまメールなり電話なりしてくれなかったのさ!!とじたばたしていたら、母上のバレエ友達さんのどなたかが録画してらしたのを、ダビングして下さって。嗚呼、わたくしの手元には、エドゥアール・ロックの、ラララ・ヒューマン・ステップスの、アメリアが、今、あるのです…! ありがたや〜!
 映像作品として新たなアプローチが為されている「アメリア」は、舞台で観たのとはまた印象が違っていて、完全に映像作品として出来上がっています。でもやっぱり…鳥肌が立つ。圧倒的な身体能力と動作の前には言葉なんか出やしない。暴力的なまでのスピードが突然、ぴたりと静止する、その緊張感といったら! ああもうたまらない大好きだ。
 振付のエドゥアール・ロックは、この「アメリア」の前の作品「ソルト」辺りから(確か。っつか多分)、ポアントの新たな可能性を引き出す実験に取り組まれたようで、ソルト〜アメリアで確立されたラララのポアントは、既存の「バレエ」「トゥシューズ」「つま先立ち」等々の概念を根底から覆すというかむしろぶっ壊してくれます。こんなのバレエじゃない。暴力だ。研ぎ澄まされた美しい暴力だ。もともとロックの振付は暴力的というか、殴打みたいなイメージを抱かせるものが多く思えていたのですが、その空気はそのまま、さらにその上にポアントが乗っかって、以前の作品よりもより一層鋭角に、研ぎ澄まされて純化された印象があります。すごい、すごく綺麗な、透き通った、水晶みたいな、暴力の結晶。暴力って言葉が良くないな、何て云えばいいんだろう。わからん。でも一瞬殴り合ってるみたいにも見える振りなんですよほんとに。生で観てると、手が身体にぶつかる音とかも聞こえるし。
 で、ポアント。執拗なまでにポアント。チュチュ着たバレリーナがカタカタカタッと上品に優雅に小さくパ・ド・ブレ、なんてもんじゃありません。ほぼ全編ポアントしっぱなし、くらいの勢いの女性ダンサーが、黒スーツの男性ダンサーにもんのっっすごい勢いでぐるぐる回される。とにかく立つ。ポアントで立ってる間だけが生きてる、みたいな風に見える。操り人形が上から糸でつり上げられて立っている、みたいに一瞬、見えるのです。極限までに縮小・収縮された接地面積。面ではなく、点でのみ地上と繋がる身体は、むしろ浮いているようにさえ見える。軽く浮き上がっているように見えてしまう。でも、実は点は突き刺さっているのです。地上に鋭く先端を突き立てて、彼女たちは屹立している。つり上げられているんじゃなくて、そびえ立っている。優雅というよりはむしろ、力強くて攻撃的。ポアント見てそんなふうに思ったこと、なかったなぁ。静止している間の、張り詰めた筋肉の震えが、何だか息詰まる。
 男性4人で踊るパートはポアントありませんが、あーエドゥアール・ロックだ!という感じのいかにもな高速暴力ダンスで、それはそれでまたたまりません。口元をぬぐう様な仕草とか、こめかみに触れる仕草とか。ルイーズ・ルカバリエ*2がいないのが寂しい〜。
 そういえば劇場で見た時に度肝抜かれた、超高速ポアントする男性ダンサーはいなかったな。彼のアレ、また見たかったんだけど。
 息つく暇もない、瞬きもできない、研ぎ澄まし削ぎ落とすことによって純化された身体表現。ノイジーなミニマルミュージックとその上にふわふわと漂うヴォーカルを纏って、超高速に紡がれる尖った結晶みたいな、ダンスです。
 ルカバリエがいた頃のラララ動画がyoutubeにあったので貼っておく。
YouTube

*1:といってもその間6年くらい

*2:プリンシパルダンサー。宙に浮ける。「有翼の金獅子」とか云われてなかったっけ?