ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

DAZZLE「Touch the Dark」@都内某所(12/1/18:00)

 イマーシブシアターって最近よく聞くやつ、NYの「スリープ・ノーモア」とかUSJの「ホテル・アルバート」とかのレポートがツイッターにも流れてきて、面白そうだな~行ってみたいな~、とぼんやりと思っておりましたところに、DAZZLEがこんなものをやると小耳に挟みまして。面白そうとは思いつつちょっと保留したのですが、会場の建物の取り壊しが決まって今回が最後になると聞いてやっぱり行っておこう!と思い立ってチケット取って友達と行ってきました。

 

https://www.touchthedark.jp

 

 イマーシブとは「没入型」と訳されていますが、VRとかARとかに使われるいわゆる体感型のもの、という意味のようです。の、シアターなので、客席に座って舞台を観る、のではなく、建物全体が劇場として使われ、観客は建物の中を案内されて、もしくは自由に、歩いて動き回りながら観劇する、というのがイマーシブシアターというものです。たぶん。大体そういう感じだと思う。それをダンスカンパニーDAZZLEが手掛け、今回で3回目の公演だそうです。去年からやってたんだね知らなかったーもっと早くに知りたかった…。

 建物に入った瞬間からもう、物語の世界の中というか作品がスタートしているというか、なので、建物の外観も撮影禁止、中で体験したことも詳細はネタバレNGのお約束でした。だから写真も何も残っていないのね…手元には入場時にもらった注意書きと建物の見取り図と黒いマスク、あと終演時にもらった診察券風トレカだけ、ネット予約のみなので半券すらない(笑)。夢みたいだなぁ本当に行ったのかなぁでも確かにあの世界の中を歩き回ったよなぁ…あんまり現実感が薄くて記憶が信用できない…。

 会場の場所も明記されておらず、チケットを予約すると返信されるメールに住所のみが記載され、ぐーぐるさんに頼って行ってみると…ほんとにここなの…?って感じのとても不安感をあおられる場所で…案内の看板とか目印も何もなくて、日は落ちて暗くなってるし、ひとりだったらめちゃくちゃ怖いやつですよ。ふたりでもけっこう怖かったし(笑)。回りにそれっぽい人が数人いて、受付時間が来ると入口が開いて、中に入れたけど、開場時間過ぎてからだと余計に(待ってる人が外にいないから)わかんないような気がする…怖いな…。

 ネタバレ厳禁なので目にしたものについては書けないんだけど、中に入った時点で同行者とは確実にバラけさせられて、別行動になる上に、黒マスクで顔もあんまりわからない、手荷物は入口で渡されるナップザックに入れ替えるので鞄も参加者全員同じ、ドレスコードが「黒」なのでさらに外見で見分けがつきにくくなる、その上でもう一段見分けができないようにされるので、会場内を自由に動き回れるようになってもお友達と合流が難しいシステムになっていて、上手いなぁと思いました。体験型の謎解きゲームみたいに、友達やグループで協力して…みたいなのとは意図が違うのね。キャッキャするやつじゃないからね…とても静かに、静寂の裡に進むのが美しかったです。音楽とかはあるけどね。

 1公演55名限定で、中でさらに分けられるので、とにかく何かもう贅沢!!って感じで…DAZZLEのかっこいいダンスが至近距離というか目の前というかむしろ避けつつな時もあるくらいの距離感で堪能できる。演劇的要素もあるので、セリフ…は録音音声だけど、ひとつひとつの場面を観ながらどういうことだろうとか、時系列はとか、少しずつ受け取れる情報を自分の中で組み立てていくのも面白い。謎解き要素もそれがメインではないけどちりばめられているので、解いていくのも面白い…んだと思う! けど1回じゃ情報少なすぎて無理!! バラけた友人と終演後に、見聞きしたものを摺り合わせたんだけど、結構違うものを観ていて、それぞれの情報を合わせてああなるほどー!ってなる部分もあったり、それでも全然ピースが足りなくて全体像がスッカスカにしか組み上がらなかった(笑)。なるほどこれはリピートしたくなるやつです。が幸か不幸かわたしが行ったのは千秋楽前日…もちろんその後のチケットは完売…よってこれ以上のお代わりは不可能なのでした。前半行ってたらまずかった間違いなく再診受けてたわ…。

 何となく怖そうな雰囲気だったので、ホラーなのかな…とびくつきながら行ったけど、怖がらせる要素は特になくて、でもひたすら雰囲気は怖かった…怖い目には合わなかったけどひとりにはなりたくないね…幸いわたしは常に人がいる状態の部屋にしか入らなかったので良かったです。いやだよー地下にひとりぼっちになったりとかしたくないよー怖いよー!!

 各回5名ずつ、プレミアムシート的なお客さんがいて*1、その人たちは一般とは別のルートに案内されたり、えっそんな役を!?ってところで演者側になっていたり、ちょっと良いこと(?)が起きていたり、プレミアムな体験ができる感じでした。アレいいなぁちょっとやってみたかったなぁ(笑)。あと、音声ガイドの貸出サービスもあって、音声ガイドにもまたいろんな謎を解く鍵があったようです。というかわたしたちが何のヒントなんだ!?ってずっと考えていた、ちりばめられていたモノが、あれは音声ガイドの何かだったんじゃないか…?と思えて仕方がない。だったら謎解きのヒントじゃないな(笑)。

 いろいろ謎が謎のままで、どうやらエンディングも2つあるらしくて、謎解きとしてはほとんどわからないまま終わってしまった初診だったけど、でもわからないなりに面白かったし、あんな場所をあんなふうに歩き回って、あんなものを観られるなんて本当に特別で贅沢な体験だったので、あの場所はもうなくなってしまうかもしれないけど、どこか別の某所でまた…違う形でもやってもらいたいなー。その時は是非また行きたいです(ワンピースはあんまりワンピース自体に興味がないので…うん…)。

 ふと、直島の「in a silent way」とか「SONNAR」も、回遊式というか自分で歩いて観て回る(回る?)タイプの作品で、イマーシブに近いような、気がしました。まぁ造り込まれた作品世界に入り込む、という感じではないんだけど…作品の中に自分が取り込まれる、観客も含めて作品になる、って部分では近いような。なのでわりと…知ってる空気な感じもあったりしました。何となくね。

*1:ちょっとお高いの

「マクガワン・トリロジー」シアタービューイング(11/23)

 台風近づく世田谷パブリックシアターで今年の7月に観て、とてもハートを撃ち抜かれた「マクガワン・トリロジー」のシアタービューイングが開催され、これは行かねば!と出かけてきました。カメラが入っていたとは聞いていたので、円盤化は楽曲使用のアレコレで無理だろうけど放送してほしいな~、なんて思っていたけどシアビュになるとは! もう一回観たかったけど行けなかったのでとても嬉しい~あとお高見だったから表情とか細かいところが見られるのもありがたい~。

 近場の映画館で観ましたがうん半分くらいの入りだったかな…映画館音響であの曲たちが聞けるのも嬉しかったなぁ。1幕のヒャッハーっぷりが最高に好きなんだけど、劇場で観たのとは全然違う角度*1で表情とか、対峙する構図とかが見られたのがとても良かったです。迫力というか、生っぽさはね、もちろん劇場とは比べられないんだけどね。でも劇場では角度的に見えなかった、アハーンの血が壁に飛び散ってそれが流れ落ちていくのとか、階段から滴り落ちる血とか、めちゃくちゃ美しくて良かったんだ…。アドレナリン出まくってる松坂桃李くんヴィクターのキラッキラした目とか、涙でくちゃくちゃになりながらもキリッと気丈な趣里ちゃんのお顔とか…とても良かった…。あと収録回のヴィクターは1幕でポテチの欠片が髪にくっついてだーいぶ長いこと髪にポテチ付けたままでした。途中でアハーンに「ポテチ付いてる」って云われてたけどわかってなかった(笑)。

 映像で観てもヴィクターはとてもセクシーで最高にイカレててかっこよくて大好きで、2幕の胸が苦しくなる哀しみと諦念と寂寥も素晴らしくて、あんななのにとてもエンジェリックで、また観られて本当に良かったです。開演前とか幕間とかがないので、そこで流れている音楽からすでに始まって続いている感は得られなかったけど(ちょっと…わりと残念)、あと1幕と2幕続けて上映だったから余韻何もない!!ってなっちゃった(笑)けど、でもやってくれただけで充分ありがたいので文句ないです。世田パブで台風の所為で買いそびれてたパンフも買えたし!

 シアビュで観て思ったのは、ヴィクターはメイのことも粛清したのかもしれない、ってこと…その手段というか方法はとても優しくて哀しみと慈愛に満ちていたけど、メイが「大したことはしてないわ」みたいなことを云った時のヴィクターの反応とか…やっぱ何かしたのか…って思えたので…。どうなんだろう。

 やはり音楽がとても耳に残るので、終演後はさっそくスミス聴いて帰りました(笑)。あとブロークン・イングリシュとパッセンジャーズね…とても好き…。わたしがマクガワン最高なんですけどーとか云ってたのを覚えていた友人が、シアビュ近くであるから行ってみようかなって云っていたので、是非!!と勧めたのだけど、考えてみたらその友人はあんまりこう…1幕を満面の笑みで観るタイプのひとではないような…?って終演後に気が付いて、大丈夫だったかちょっと心配だった(笑)んだけど、無事楽しんでもらえたようで良かったです。1幕びっくりしたって云ってたけど…ですよね…そういうの好きなタイプなら間違いなくヒャッハーなんだけどね…。すいません嗜好がアレなもので…。

*1:横から見下ろしてたから…

「SONNAR」関連

 QeticというWEBマガジンに、「SONAR」のレビューが掲載されています。写真が美しくて大きい!

qetic.jp

 何だかもう懐かしい感じがする。特別な時間を特別な空間で体感できたなぁ。「迷いなく確固たる立ち位置を決め」ていた一部の観客です(笑)。わたしは海底の小石になった気分だったよークジラの起こす水流によろっと巻き上げられる担当ですね。海藻ほど身を任せてもいられなかったような…。こうやって客観的に書き起こしてもらえると、そうだったそんなだった、って蘇ります。改めて思い返しても、ほんと不思議な作品だった…。もっと音にも注目…違うな、集中してみたかったな。でも目の前でいろいろ起こるとどうしても視覚にいってしまうのね…仕方ないのね…。

談ス・シリーズ第0弾「イキ、シ、タイ」アフタートーク決定

 本日よりツアースタートの談ス第0弾「イキ、シ、タイ」、明日12/5横浜公演後のアフタートークに未來さん参戦とのことです。って数日前に流れてきたけどバタバタしてて遅くなってしまった…。

www.facebook.com

 何か趣旨が不思議(笑)なんだけど…どういうことだろう。行かないとわからないな!

 まだチケット買えるし、Peatixでも扱ってるんですね。手数料なくて便利よね。

ikishitai-yokohama.peatix.com

2018年11月29日:いいにくの日

 ですが特に良いお肉を食べる予定などはございません。

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新感線RS「メタルマクベス」disc3@IHIステージアラウンド東京(11/24夜)

 回る新感線シリーズ最後の演目、メタルマクベスdisc3に行ってきましたよ。去年から散々通ったルートも、座席ガチャも、赤くて簡素だけど実は座り心地は悪くない客席も、たぶんこれで最後です。新感線の後は何するんだろうね?? また回りに行く機会、あるかなぁどうかなぁ。

 そんなちょっぴりセンチメンタルな気持ちにもなりつつ、最後のメタマク観てきました。今回の夫妻はウラケンこと浦井健治さんと、我らがまっさんこと長澤まさみちゃん、そしてレスポールJr.は高杉真宙くんです。まっさん夫人に真宙くんがジュニア様なんてわたし得~!!と楽しみにしていたdisc3、は、とても楽しかったです!! メタマクはいつも大体楽しいけどさらに幸福感高かった~。歌とダンス…は予想通りな感じだったけど顔面が可愛過ぎるジュニア様だったのでもうそれだけで…拙者幸せ…。何というか、「ジュニア様」と呼ばれる子がとても可愛い、という状態が幸福である、という…キャストが誰でもいいんです可愛いことが大事なんです…いやぁ可愛かった。もうそれだけで合格。もちろん初演が至高で最高なのは揺らぎませんがジュニア様が可愛いっていうのは良いことだ。うむ。

 初っ端から頭の悪さが露呈していますがええと、disc1だか2だかどっちもだったかで名前が出てきてええっ名前あったの!?となった旧マホガニー領主の名前をやっと覚えて帰ってきたのでそれも満足です。ゼマティス。ギターのメーカー名。でもdisc3のゼマティスさん太ってなくて若干かっこいい系だったのでそこはちょっと不満。やはり仁さんのような反逆者を輝かんばかりに若くて美しいジュニア様が斬首する、というのが良かったですね。真宙ジュニア様斬首してないけどね…事故だよね…あれもギロチンじゃなくて剣がいいね…初演至高主義ね…。

 浦井ランディは第一声の印象がもう「あっ東宝の声がする!」だった。良い声だった。アホっぽさ増し目なランディだったけどウラケンさんなら納得だし、凄みもかっこよさも転落していくみじめさもとても鮮烈でした。オープニングで仮面片手に出てきた時には「あれっ髑髏城かな?」ってなった。まっさん夫人はねーもう足が長い!! 顔が小さい!! 鬼スタイル!! そして悪女が似合う~あほのこランディを手玉に取っていくの巧い~~ほとんど調教~。パンツスタイルの夫人も新鮮でした。あとBBAメタルも足が長かった。お歌もミュージカル女優や歌手の夫人たちと並んでも遜色ない堂々とした歌いっぷりでかっこよかった~! ドエス度は一番高い夫人なんじゃないかしら。ローラはやっぱりじゅんさんの安定感半端ないし、王専属シンガーはやっぱり冠くんがベストだなぁ。炎の報告のブチアガりっぷりが違った…シャウト大事…。あと個人的にとても嬉しかったのは、disc1でも2でもなくなっちゃってたお鍋で蘇るレスポール王の「何も恐れるな~」がお歌に戻ってたこと!! あの一連の曲がメタマク楽曲内で2番目くらいに好き*1で、レスポール王のパートも大好きだったので復活はとても嬉しい!! むしろ何故なくなっていたのか疑問だ。

 あとはナンプラーの衣装が何かすごかった(笑)。びっくりした…パール王は紫色で安定のかっこよさでした。主従再会シーン、disc1、2に比べるとだーいぶエモかったように思います。がそれはわたしの真宙贔屓フィルターの所為かもしれない…しかしやはり見れば見るほど初演の主従どうした……ってなるの最高ですね。何でああなった…そしてどうしてなくなった…(笑)。

 ソーロングはほんとあの…うん……周りが踊って真ん中で格好良く立つとかっこいいよね……おうたも予想の範囲内でしたがでも顔見るとあっ可愛いもう優勝~ってなっちゃうから優勝でした。オペラ覗くたびに「えっ女の子みたいに可愛いぞ?!?!」ってなった…いやぁ可愛かった…真宙くん最近見かけるとだいぶ大人っぽくなってきたねぇって感じだったけど、いやまだまだ全然可愛いわ…。身体の細さが初演の頃を彷彿とさせて佇まいだけでもほんと可愛いでした…。

 そういえばグレコ夫人が噴水脇に倒れてローマンが逃げるのアレレ?ってなったんだけど、なるほど…事情は察しました。グレコが「触るなぁ!!」ってローマン背負って入ってきたから…そっか、って*2…。

 あとは2幕冒頭の曲がめっちゃかっこよかったんだけどあれ夫人の溜息なのかな…別曲だけどすごくかっこよかったんだ。メタルキツネ面ダンサー従えて、冠くんもメタルキツネ面装着してラップパートやってて良かった…。バンクォー増殖が軽く東宝めいてたんだけどあれはわざとですよね? ってことはdisc2の同じシーンが妖怪いっぱい出てきて何なのかな…??って空気になったけどあれは歌舞伎とかそっちのネタだったのかな…ごめんなさいわからなかった…。

 そういえば今回やっとドドズギャンが聞こえたんだけどdisc1と2にあったかな…聞こえなかった気がするんだけど…。端っこ席で音響良くなかったからな。今回は真ん中の真ん中ですごく見やすかったけど回転感は真ん中過ぎてあまり感じなかったです。ラスト座席ガチャはまぁまぁだったね!

 …とあんまり本編の内容に触れていない感じですが、もう触れるまでもない気もするからこれでいい。楽しかった! 生演奏はアガるね!! カテコが冠くん歌唱のソーロングでそれもとても良かったです!!*3カテコでハケる時にメタルさんと真宙くんがハイタッチしてたのが、ガイム的にもTRUMP的にもごちそうさまでした。いや~可愛かった!! 視界が可愛いに満ちていた!! 満足!!

 あっ開演前にアイスモナカを食べたらとても固かったです。シンカンセンスゴイカタイアイスモナカだった。キャラメル何とか味にしました。

*1:1番はソーロングなので

*2:ウエイト的な問題かなって……

*3:本編中のソーロングが手に汗握る感じだったから…

劇団ワンツーワークス「善悪の彼岸」@中野ザ・ポケット(11/22夜)

 はじめましてのワンツーワークスさん観てきました。「テイクミーアウト」や「ジハード」で泣き果てさせられた竪山隼太(たてやまはやた)さんご出演の、刑務官と死刑囚のお話です。…最近この辺も触れる機会の多い題材だなー映画「教誨師」ね。

www.onetwo-works.jp

 刑務官と死刑囚、加害者の家族、それぞれの立場から見る死刑制度、死刑囚、そして死刑執行。殺人罪で死刑に処される死刑囚に対し、執行ボタンを押す行為は殺人ではないのか。死刑囚の「正しい」在り方とは、死刑囚はどう死んでいく「べき」なのか、死を受け入れ恐れない死刑囚にとって死刑は果たして「刑罰」なのか。なかなか、正対して考える機会のない、でも絶対に考えるべき、そして答えの出ない、問題に、新人刑務官霧島と一緒に向き合いながら模索していく、そんな2時間でした。しんっっっどかった……!!!

 作品自体はユーモラスなシーンもあって笑えるところもあるし、演劇的演出的に面白いところもあって、転換がかっこよかったり、お芝居的なエンターテインメント性もある、んだけど、まぁ題材からして重いのですが、とにかく…しんどかった。テーマの重さももちろんなのだけど、自分がどう思うのか、自分はこれに対してどういうスタンスなのか、どういう立場なのか、が見つけられなくてそれがとてもしんどい。人は、日本人は、死刑に、死刑囚に、殺人を犯した者に、何を望むのか。誰のためにどんな死を、生を、望むのか。舞台上から投げかけられる問いが難しくて、観ながら熱が出そうだった。ぜんぜん答えが見つからないし答えに近づけそうな方向性すらわからない……方角すら見いだせない迷路を迷うのはとてもつらい。

 刑務所の刑務官、という、最も身近に死刑囚と接し、「最期」を告げ、「最期」をもたらし、「最期」の瞬間に立ち会う、とても特殊な職業だけど、もちろん彼らも人間で。人間として、死刑を執行することを正当であると考えようとするのは自然なことだし、死を迎える囚人がどうあるべきかという理想が、その執行にまつわる刑務官への負担を軽減するようなものになるのも理解できる。できるんだけど、そう都合の良いことにはならないのも当然で。刑罰としての死を少しも恐れない囚人にとって、その「死」は果たして刑罰として機能するのか。犯した罪を悔い、被害者へ許しを請いながら恐怖に震え取り乱す加害者へ、もう苦しまなくていいとボタンを押す、という執行する側の理想を、自らの執行時に途中まで再現してみせ、それを冷笑し、目隠しはいらない、大丈夫だからと落ち着き払った態度で自ら絞首台に立つ囚人にとって、「死刑」とは何なのか。

 どうしても、映画「教誨師」の高宮という死刑囚を思い出さずにいられないのだけど、高宮はそういう意味ではとても刑務官にとって「良い」死刑囚だったのだな、と思ってしまったり。良い、というのは、ボタンを押す負担が軽い、という意味で…。「善悪の彼岸」で執行された白根という死刑囚は、それを見透かしてさらに一枚上手を取るような…怖かった…。

 わたし個人的には、死刑制度には反対なのですが、作品中に出てくるのは刑務官が中心なので、彼らのセリフとして聞こえてくるのは死刑制度の正当さで。でもそれを聞きながら、聞けば聞くほど、やっぱり人が人を裁くのに「死」を用いるのはナンセンスというかダブルスタンダードに過ぎるよな…というのが浮き彫りになっていくのが恐ろしかったです。面白いとは云えない…そんなとてつもない矛盾を、「刑務官」という肩書きだけで、人間に背負わすのも、酷いことなんじゃないかな…。

 初めての執行でひとりボタンを押せなかった刑務官・霧島を演じた竪山隼太さん、とても…負荷の高い役で…理想と現実に向き合って立ち尽くし悩む姿が、それはそれでとても真摯でした。悩んでも答えは出なくて、でも観ながら一緒に悩んで考えて、でも正解もぼんやりとした糸口すらも見つからなくて、どうしたらいいんだろうどう考えたらいいんだろう正義って誰にとってのそれが一番重視するべきものなんだろうって…やっぱりわからないままなんだけど、霧島さんと一緒にぐるぐるするのは絶対に無駄じゃない時間なはず。死刑囚の白根を演じた多田直人さんはキャラメルボックスの俳優さんとのことで、今回が初見だと怖い印象しかないんだけど…きっとそうじゃないんでしょうきっと…。

 本当に、両耳から湯気が噴き出そうなくらい大変なお芝居だったけど、観るべきものでした。しんどかったけど…でもちゃんと考えなくてはいけないことだから…。