ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

阿佐ヶ谷スパイダース「MAKOTO」@吉祥寺シアター(8/10夜)

 お盆前に吉祥寺シアターで阿佐スパを観てきました。劇団員が大幅に増えて、新生という感じの久しぶり阿佐スパです。いつぶりかなと調べたら、2010年の「アンチクロックワイズ・ワンダーランド」が前回だったので*1…8年ぶり…葛河思潮社は2014年に「背信」を観たのが最後のようだ。久しぶりだ。

 「アンチクロックワイズ~」の頃の阿佐スパは、とても迷宮のような、本のページをバラバラに切り離してランダムに拾い上げた紙片を読むような、不思議な作品になっていて、云ってしまえば難解なんだけど、その何とも云えずわかりそうでわからない感じがわたしは嫌いじゃないというか面白いというか、だったのですが、今回の「MAKOTO」はあの頃に比べるととてもストーリー性があったし登場人物もキャラクター性があって、昔の*2阿佐スパっぽさも感じられる雰囲気でした。でも、だからといって最近(でもないけど)の、つかみどころのない茫洋としたファンタジックな空気がないというわけではなく。その、わりとリアルな現代の東京の池袋の隅っこ辺り、から、ファンタジーやオカルトやSFがシームレスで混ざり込んでくる感じが面白かったです。夜を疾走する狼タクシーの一場、あのめくるめく感じと高揚感、涙が出るほど素敵だった…!

 医療ミスで妻を亡くした売れない漫画家の、失意と再生の物語、と云ってしまうけれど、そこに不可思議な夢みたいなものが混ざり込んできたり、妻の執刀医の自宅に乗り込んだり、亡くした妻の代わりを調達(?)したり、賠償金目当てに訴訟を起こさせようとする親族が来たり、いろいろなことが起こるのです。そして自称漫画家で今は交通整理のバイトをしている男は、妻の遺品を処分するごとに強大な謎の力を発揮するようになる。飼い犬の花子と一緒に、かつて妻と散歩した道を歩く男、彼に寄り添うはなこが愛しい。暴走する中年男的な、かつての阿佐スパっぽい勢いを感じつつも、不思議な、不条理とも云えるようなものが混じり込み、幻想的で物悲しい寂寥感が通奏低音のように常に鳴り響く。狼のタクシーの遠吠えに呼応する狛犬たち、渋谷の街の光の明滅、タキオン粒子の奔流、爆発。あの日投げたボールの行方、追いかける花子の遠吠え、ノスタルジーの苦み。長編漫画の結末はいかに。可笑しくて悲しくて、美しくて不思議な、朝から次の朝への、駆け抜ける夜の、物語だった。

 下弦髑髏城ぶりの中村まことさんは、温和な柔らかさと紙一重のヤバさが匂い立つようで流石でした。けっこうハチャメチャなことになってたけどそれもまことさんならあるかも、と思わされる説得力と声の良さ。同じく下弦髑髏の渡京さんだった伊達暁さん、は、素敵だった(笑)。女装がひどいんだけどそのひどさを含めてとても良いやつだった(笑)。あと濃厚だったな…! 白衣も似合ってた。中山祐一朗さんの女装は…汚いだけだった(笑)。今まで男臭い印象の阿佐スパだったけど、新メンバー加入で女性陣が強化されて、またみんな素敵で! ちすんさんめっちゃ綺麗でセクシーで声も可愛くて足も綺麗でほわわーってなってしまった…李千鶴さんもかっこよかったなぁ。木村美月さんは健康的な美少女って感じでお父さん長塚さんもたじたじでしたね。志甫真弓子さんもちょっとつかみどころのないお母さん不思議でした。そして「半神」ですごく素敵なマリアだった藤間爽子ちゃんが…やっぱりめっちゃ可愛かった…わっしゃわしゃしたいよ…遠吠えが哀しげでとても良かったです。声も立ち姿も綺麗だなぁ。

 ラストの演出が、観ている時はちょっとピンとこなかったんだけど、あとで思い返してみて、あの駆け抜ける夢みたいな朝から次の朝までの出来事は、それ自体が彼の初めての「長編漫画」だったのかもしれない、と思いました。大団円だったね!!

 そして、終演後のバックステージツアーも参加してきました。すんごい楽しかった! 舞台監督の福澤さんと長塚圭史さんのアテンドで、さっきまで見上げていた向こう側の世界に靴脱いでお邪魔するの、すごい経験だった…精巧な写真プリントの床がまさか起毛の絨毯だったとは、セットの写真プリントも布地だったとは! 舞台は幅は見えていたのでなるほどってサイズ感だったけど、奥行きというかセット裏が本当に狭くて、こんな小さなスペースでいろいろやってたの!?ってびっくりした。窓の開口部もけっこう、思ったよりプリミティブというか…開いてて塞いでるだけなんだね…さっき観たばかりの小道具なんかも置き場が決められてきちんとそこに収納されていて、不思議な感じでした。こんな雑然とした感じなのにさっきまであんな熱量の世界が立ち現われていたんだな…。質疑もラフな感じに行われて、美術があの形に決まるまでの過程や長塚さんのいつもの感じ(笑)も聞けました。写真プリント面白かったし「写真」て何か特別なノスタルジーを纏っているものだよな…。

 吉祥寺シアターの舞台から見る客席の眺めも感慨深かったです。こんな風に見えてるんだ…思ってたより客席の顔って良く見えるんだな…。立つ方は大きめのホールしか知らないので新鮮な距離感でした。面白かった! プレトークは間に合わなかったけど機会があったらぜひ参加してみたいです。次の阿佐スパ公演とかで。

 開演前も終演後もロビーとか物販に皆さん普通にいらしててとても落ち着かなかった…どうしても何かそそくさと通り過ぎてしまう…。

*1:※うそ。2011年7月の「荒野に立つ」も行ってたよ!

*2:って云い方が合っているのかわからないけど

談ス・シリーズ第3弾「凸 し 凹 る」関連

 久々の「凸し凹る」!

 昨日気づいたのですが、未來さんバースデーの8月20日に談ス・シリーズのFacebookが久しぶりに更新されていて、オフィシャルフォトグラファーMさん撮影の未來さん特集がアップされています。わー…今となってはすでに懐かしい…。

 懐かしくて嬉しいバースデープレゼント(?)でした。もらってしまった(笑)。「その1」なんてあると、2とか3も期待してしまう…しています…!

2018年8月20日:今年もこの日がやってきた!!

 6年前に福岡で、「この9年間、1日たりとも、まったく考えない日はなかった」なんて話をしたことを思い出すのだけど、その後6年経ってもやっぱり同じ状況で、まったく考えない日がない年月が延びていくばかりです。15年って!!(笑)まさかこんなに長い間、ずっと好きでい続けるとは、あーんまり、思っていなかったんじゃないかなぁ15年前は。しょうがないよね、見るたびに惚れ直してるんだもんね、興味が尽きることがないんだもんね、次々新しくてわくわくするものが出てくるんだもんね。

 わたしには高く飛ぶことも遠く飛ぶことも早く跳ぶこともできないけれど、高みから見下ろす景色も、遠いどこかの森の音も、風を切る空気の圧も、あなたを通して体験することができる。わたしひとりじゃ知ることの出来ない世界を、そこに通じる扉を、少しだけ開けたままにしてその向こうに進んでくれるから、えっ今度は何なの!?ってわくわくしながら、たまにおっかなびっくり、少しだけ開かれた扉の向こうを覗いて見ることができる。手を伸ばしてみたり、そおっと足を踏み入れたりしてみることだって、できる(かもしれない)。そんなところに扉があったの、って驚くようなところだって、開けてみせてくれるから、思いもよらない、想像もしていなかった景色にめぐり合ったりもできてしまう。

 あなたを追いかけると、そういうことばかりで、本当に、楽しいのです。色数の少ないわたしのキャンバスが、うっかりカラフルになったり、そんな色あったっけ!?って色が突然ぶちまけられたり、とんでもない色が混ざり合ったり、するのです。次はどんな知らない景色を見せてもらえるのか、楽しみでなりません。「SONAR」まだひと月ちょっと先か~待ち遠しいなぁ!

 お誕生日おめでとうございます。どうか健康に、想いのままに。あなたとあなたの愛するすべてのものが健やかでありますように。健やかなら大抵のことはきっと、うまくいく。

 本日のエントリーはこちら。

 

futurist.hatenadiary.com

 

15回目のHappy Birthday!

 初めてお祝いをしたのが2004年の8月20日だったので、今年で15回目のおめでとうの日です。いっぱいお祝いしたなぁいっぱい食べたなぁ(笑)。

 今年も、都合の合った有志3名でイブお祝いしてきました。今年は椿山荘ル・ジャルダンの3段皿です。お誕生日プレートお願いしておいたら、ロウソクまで立ってきたよ!

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 アイスティーでおめでとう乾杯してから、最近の動向やら近況やらオススメやらお悩みやら、多岐に渡る話題を延々とだらっだら、美味しいお茶と美味しいものを摘まみつつしてきましたよ。久々に会うお友達もいたしなかなか有意義な1日でした。アフタヌーンティーって大体、最終的にお腹苦しくて死にそうになりながらスコーンと戦う、みたいな展開になることが多いのですが*1、椿山荘のは何か、何もかもちょうど良かった…量も甘味と塩気のバランスもちょうど良くて、最後まで美味しいままで完走できた…素晴らしい。ちょうど、マンゴーフェアが始まったばかりくらいだったけど、甘味もセイボリーもとても美味しかったです。美味しいチャーシュー的な肉が乗ってるカナッペ的なもの美味しかった…何だっけ豚バラのコンフィだったっけ…でもあれはやたら美味しいチャーシューの味だった…。紅茶も美味しかったなぁフレイバーティーのハニーレモンみたいなのとても良い香りだった。あれほしい。ティトゥーリアというところのらしい。探してみよう。

 もちろん三段皿のみで宴が終わるはずはなく、老舗和菓子屋さんの麗しいかき氷をジェンガの如く切り崩し、雪崩を起こしつつも冷たい美味しいとひんやりを味わい、温かいお茶で生き返り、さらにもう一軒シャンソンの流れる麗しいカフェでガチ酸っぱいレモンジュース(ガムシロップでお好みの甘さにできる)を堪能し耳下腺をきゅんきゅんさせ、すっかり日も落ち切った頃にお開きとなったのでした。カフェの中が美味しそうなケーキの焼ける匂いで満ちていて、胃はもう全然無理なんだけど美味しそうでとてもつらかった(笑)。いつかリベンジしたいなぁ!

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 毎年、お誕生日おめでとうにかこつけて楽しく美味しく過ごさせて頂いている1日ですが、そんな時間を共に過ごせる相手に出会うきっかけも未來さんがくれたものだし、離れた場所にもそんなお友達がたくさんいて、何かの時に集まったり、会えたり、会えなくても何らかの繋がりがあったり、するのがとても、不思議な感じなのだけど豊かで、どちらかというと人とのつながりが希薄なわたしのような者にも、そんな豊かな関係性を築かせてもらえて、ありがたいなぁ幸せだなぁと思うのでした。いつも、舞台の上やスクリーンの向こうや画面の中で、その背中越し肩越しに様々な見たことのないものを見せてもらって、味わったことのないものを味わわせてもらっているけれど、そういう作品ではない部分でも、いろいろなきっかけを作ってもらっていたり、結んでもらっていたり繋いでもらっていたり、して、今のわたしは成り立っていることを、改めて感じる15回目のお誕生祝いなのでした。ほんと、一生モノのいろんなものをね、未來さんを通して手に入れているよね。素敵なセンス・オブ・ワンダーを体験させてもらえるだけで充分ありがたくて幸せなのに、それ以外にもいろいろ、本当にいろいろ、(時には勝手に)頂いてるの、感謝しかないです。幸せ者だなぁわたし。

*1:わたしは

おいぬさま詣り

 7月半ばの猛暑の中、1年ちょっとぶりのきなこ詣りに行ってきました。ずいぶんご無沙汰になってしまった…1年以上開いちゃったけど忘れられていなくてよかったです。

 きなこさんもいつの間にかもう10歳、所謂高齢犬に突入のお年頃、ブラックシルバーだった毛並もだーいぶシルバーになってきた気がします。でも相変わらず可愛い…何馬鹿かわからないけど可愛いんだ…トリマーさんがいつもの人じゃなくて何かへんちくりんなカットにされてるけど、よだれ焼けで相変わらず口のまわりまっかだけど、でも可愛い…。そしてこの頃ちょうど死にそうな猛暑期間で、さらにきなこ宅は高温でニュースになる地域を含む群馬県平野部で、うん…とても暑かった…。さすがのきなこもエアコンがさやさやする場所でぺったりしていた。寝るときはケージの中なんだけど、暑そうだから2リットルのペットボトルに水入れて凍らしたのにタオル巻いて置いてあげたら、顎乗せて寝てました。良かった。

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 今回撮ったきな写真、のきなみべろ出てて暑かったからね…ってなります。

 あんまり暑いので避暑に行こう、と軽井沢まで犬連れで行ってきたんだけど、外気温30℃ですごく涼しく感じるのね。湿度も低いし風は涼しいし天国だった…そしてわんこ連れさんが多い軽井沢のアウトレット、出会う犬はすべて倒すべき敵と認識しがちなきなこさんは常に臨戦状態で大変だった(笑)。何であのこあんなにやる気に漲っているのだろうちっこいくせに…巨大なボルゾイさんとかラブさんとかにも勝つ気しかない勢いで立ち向かっていくのほんとやめて(笑)。この辺は(も…)残念ながら躾上手くいってないなって思ってしまうのだけど、わたしの子じゃないから仕方ない…。せめて間に割って入って邪魔をする人係になります。面白かったのは、ご飯食べたオープンエアのカフェで、ペットカートに入れられたわんこさんがすぐ近くでわんわん云ってるのにきなこは無反応で、でもちょっと離れたところを歩くわんこさんには反応しまくってて。視覚>>聴覚なんだな、というのがわかった。吠え声聞こえてても平気なのに姿が目に入ると反応するのかなるほど。

 あと連れがお店を見ている間、ベンチで待っていたきなこさんのそばに、どこかの小さなお嬢さんがずーっと立っていて、ずーっときなこを見ていて、さわってみる?って訊いてみたら「ママがダメっていうから…」って、でも離れず立ち尽くしてガン見していて(きなさんは好き勝手していた)、そっかーそうだねーあぶないもんね、えらいね、なんて云ってたのだけど、そのうちお嬢さんがママさんのところに一度戻って、また戻ってきて「ママがいいって」って報告してくれたので、きなさんをおすわりさせてちょっとだけ触ってもらいました。頭撫でられるのが嫌いなので、顔の下に手を出してもらって顎下とかを撫でてもらうようにして、きなさんは塩対応上等が常なので特に愛想よくとかもしてくれないんだけど、お嬢さんはちょっとおっかなびっくりだけどでもとても嬉しそうで、わたしもとても嬉しくなりました。いつか可愛いシュナがお嬢さんちの家族になったりしたらいいなぁ。

 きなんぽは暑さ回避の為早朝5時台出発だったので今回は不参加で、人も犬もかなりバテバテのだらだらだったけど、久々に触れ合えてきな充できて幸せでした。いろいろ健康面でも心配だけど、少しでも元気に長生きしてもらいたい、それだけです。あっ今回、お風呂入れようときなこ捕まえて無理やり抱っこしたら、絶対暴れて嫌がって下手したら噛まれると思っていたのに*1、全然平気で何だか良い調子に抱っこされてくれて、こんなの10年で初めてだよ!!ってびっくりした。あれ何だったんだろう…叔母はもちろん父にも抱っこされるの嫌がるのに…。

 きなこの中での位置づけがいまいちよくわからない。父は上って思ってる(けど抱っこは噛んだことある)、叔母はいつも一緒だから大好きだけどちょっと舐めてるところがある、母…は何かよくわからない(笑)、私は何なんだろう。口うるさくてめんどくさいたまに来る親戚だろうか。でもわたしの云う事はわりと聞いてくれるんだよなー何なんだろう。気遣いかしら。顔見るととても喜んでくれるけどウザ絡みすると逃げられる。ウザい親戚でごめんよーでもまた会いに行くからねー!

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 ぺっとり。

 

*1:もし噛んだら二度と噛まなくなるくらいの勢いで叱り付けるつもりだった

新感線☆RS「メタルマクベス disc1」@IHIステージアラウンド東京(8/4夜)

 久しぶりにお城で回ってきました。お城というものはすべからく回るものなのである感…年末まで回るんですねすごいな…。

 12年ぶりの生「メタルマクベス」、青山のお城に坂を上って通い詰めたあの初夏の日々を思い出さざるを得ません。松本のプレビュー公演から大坂の陣まで、あれもこれも脳裏に焼き付いて離れないし片時も離すもんかと抱きしめ続けているわよ。きよしの奇行の数々、ジュニア様の麗しさしなやかさグレコの長細さ水分量、松さんのお肌に赤いトレーナー、どんどん削られていった門番のセリフと丹下のおっちゃん、千秋楽ライブでドラムを叩くパール王、ベースを弾くゴーグル付きグレコ殿、嗚呼何もかも懐かしい……。

 と、懐古スイッチがどうしても入ってしまうのですが、今回の鋼鉄城は回ります。新生メタルマクベスです。思い出語りしている場合じゃない。相当回るらしいとかもはやアトラクションとかいろいろ小耳に挟みつつ、後方ほぼどセンターで観劇しました。

 あのね、広い。よこはばが。極髑髏でひろびろ使うなーって思ったけど、まぁ横幅が広い。さらに広げて2画面みたいなことにもなるし、初演で上下分割していた場面が左右分割になっている。そして広くて円形なステージを駆け巡るバイク! 本当にバイクになった!! 足蹴り自転車じゃない!! これは感動した(笑)。わーん未來ジュニア様もバイク乗るの観たかったよー!!(笑)電飾スクリーンも出てくるし*1、バンドブースもあるし*2、スクリーンも180°近くまで使って映像没入感も凄いしエレベーターは上下するし何かすごいね!! お金いっぱい使ってるね!!! 生の音圧と物理の演出でぶん殴ってくるタイプのエンタメでした。すごく豪華だった…。

 脚本は初演からずいぶんと枝葉を取り払った感じで、すっきりしちゃったなぁと。わかりやすく、ランダムスター夫妻の悲劇にきっちり焦点を絞ってきたなぁと。個人的に、初演を観た後に松岡和子版マクベスを読んで「アレも! ソレも! こんなものまで原作通り!?」ってびっくりしたのがとても鮮烈な思い出なのですが、けっこうその、こんなものまで原作通りなの!?な部分がカットされてるような…長々とした修辞の部分とか、3人の魔女以外に出てくるヘカテーとか、原作の時点で??なパートがばっさりなくなっていて、ほんとスッキリしている。けど、あれは一体何だったんだ…ってなる部分が実は原作に忠実だったのを知って余計?!??ってなる感覚、が、今回のdisc1を観た後に松岡和子版マクベスを読んでも、あんまり大きくなさそうだなぁ、と思うのでした…だって開門前のすったもんだも一切ないんだもの…あまりにあっさりした再会シーンで逆にびっくりしたわよグレコとジュニア様。っていうか逆にどうして初演がああなったのか不思議だよ。なんだったんだあれは……。

 っていうか全体的に、めちゃくちゃあっさりしていた…というのがわたしの感想です。演出は派手だしカッコイイし機構はスゴイしエンタメ物理でぶん殴ってくるしほんと凄いんだけど、こんなに凄いのに、透明塩出汁スープ…って感じがして…とても美味しいのだけど薄味に感じてしまった。初演がコッテコテの背脂マシマシ豚骨ギトギトみたいなあらゆる意味で濃厚味付けだったからね…そっちに慣れた味覚には何だか薄かったんだ…いや美味しいんだけど…。物足りない、とは云わないけど、いやこの話もっとパンチあったよね?ってなってしまった。…のは、仕方ないですたまごから孵って最初に観た新感線がメタマクだったんだもの……。あとジュニア様は永遠に別格扱いだから。思い入れが重すぎるやつだから。ごめんなさい。

 ぐだぐだ云ってしまうけど、でもちゃんと面白かったです! それは本当! 3魔女がベビメタちゃんで絶対怒られるやつだったり、ローラの「あの娘のブーツは~」がめっちゃ疾走感あったり、反乱軍揃い踏みが完全に族のカチコミでかっこよかったり、あと2つの時代を広々と開いた舞台で並べてやるのとか、マホガニー城や鋼鉄城の構造がすごい複雑&広くなってたりとか、あと本物バイクとか、バイクとか、良かった点もたくさんあったし、技術の進化に12年という時の流れを感じたりしましたよ。キャストも味は違えと皆さん良かったしお歌は流石だったし*3、松下ジュニア様はイケメンでダンスもキレッキレだったし、山口グレコ殿は渋かっこよかったし。きよしが…っていうのも小耳に挟んでいたので覚悟はできていたけど、もったいない…マイケルやればよかったのに。きよしがあんまり出てこないとマクダフがきよしのツアーに帯同したから新生メタルマクベスのパーティに出席しないって話がなくなるのね…ぐぬぬ。あ、グレコもジュニアも初演のイメージより年上な感じがしました。おぼこいアピールはあったけど成人されている王子だった*4猫背椿さんのグレコ夫人とシマコはとても良かったです! 猫背さんキュートだなぁって鎌塚氏の時に思ったんだけどやっぱりキュートだった。あと初演からキャストが変わって一番違和感がなかったのは門番な。カヲルさんから仁さんになったけどほぼ変わらないのすごい…好きよ門番…。ランディはね、とても良かった! 安定感あるしかっこいいしお歌流石だし、変顔はうーちゃんの方が面白かったけど(笑)、でも素敵なランディでした。新感線のさとっさん、を初めて観たのだけど、なるほど…じゅんさんとの馴染み具合、なるほど……これが「おかえり」なのね、と納得のコンビネーション、納得の新感線芝居でした。安心安定。夫人の濱田めぐみさんはこれまたさすがの歌ウマで!! 流石だ!! ミュージカルだ!! っていうかさとしさんとめぐみさんの夫妻ほんとに帝劇感溢れててミュージカルでした。メタルかどうかはともかく、感。ただちょっと、わたしの耳にはヒステリックさがキンキンしてしまった…お歌じゃない時にね。カッコイイし可哀想だし哀れだしとっても夫人なんだけど…わたしの肌にはちょっと合わなかったかな。うん。あと個人的に寂しかったのは伝令係の吉田とヤマハがまとめられてしまったことな…伝令係のヤマハ(メタルさん)、ってすごく脳が混乱するわ。うっわたしの吉田…吉野家じゃない吉田……。

 初演から続行キャストには文句ありません。大満足です。エクスプローラーお変わりなくだしパール王今回もめっちゃかっこいい……今回もパール王かっこいい……もっと見せ場欲しかった台詞も欲しかった開門シーン欲しかった……カナコさんの宝島少女姿がまた観られて幸せです…あと「SIONかと思った」が残っていてガッツポーズを決めたわたし。それを云ったら「グレコ・ローマンスタイル」が復活していてそこもガッツポーズでしたが。グレコと門番の「ランダムはどうした」「ガンダム?」「ランダムスターだ! 主の名前くらい覚えろ」はやっぱり消えてしまった…(笑)。

 あとちょっと気になったのは、髑髏シリーズでノーストレスな利点だったはずの暗転なし舞台転換が、「間(ま)がない」感になってしまったように感じたこと…。間というか余韻というか、このシーンとこのシーンの間にはもう少しタメが欲しい、ところがそのまま流れて始まる感じがして、メリハリが逆に薄れたように思いましたよ。途切れなく続く=意識が途切れなくて集中できる、没入感、だとわたしも思っていたのだけど、鋼鉄城崩壊から老婆が這い出てくるところとか、暗転で地響きが収まるまでの時間が次の静寂に繋がって緩急というか、少し落ち着く感じが良かったな、と初演と比べて何だか慌ただしさを感じてしまった今回でした。まぁ私感ですが。

 個人的には、初演が観たい!!になってしまうのですが、それを差し引けばとても面白かったし、何よりあの物理と音圧でぶん殴る舞台は体験しておいて損はないと思うので是非劇場でご覧下さい(笑)。冠くんの魂のシャウトは生で聴くべきものだ!! あと「王を弔う歌」が始まると自動的にトイレダッシュの準備をしなくてはいけない気になるの、12年経ってもしみついた習性は抜けないのだなって感じで自分で可笑しかった。青山劇場のトイレは地下の外に増設された方がスムーズに入れるからオススメだよって12年前のゴーストがわたしに囁くの…。

*1:っていうかステアラに迫りってあったっけ??

*2:途中見えないけどあそこにいるんだよね?

*3:レスポール王が…って聞いていたのでそっかって思ってたけど思ったより大丈夫だった!

*4:未來さんも成人してたけど初演1幕の王子はティーンだったじゃん?